鳥取県米子市にあるイタリア料理専門店「ピアノピアノ」。
42年前、当時米子市ではまだ珍しかった本格イタリアンを楽しめるレストランとしてオープンし、多くの人から愛された名店ですが、12月15日で閉店します。
店を追い込んだのは業績悪化でも、後継者問題でもなく、ここ数年の「物価高」でした。
エビや白イカ、ムール貝などが入った魚介系トマトソースパスタ「ペスカトーレ」に…ポルチーニ茸とマッシュルームがたっぷり入った「ラビオリ」など。
本格イタリアンが楽しめるここはJR米子駅の近くの「イタリア料理ピアノピアノ」。
「お待たせしました。アマトリチャーナでーす」
「美味しい」
米子を訪れた人気アーティストも数多く来店した名店で、オープンは1982年。
オーナーの笹島順子さん73歳。
元々はイタリア・ローマで料理の腕を磨いた夫の一信さんがオーナーを務めていましたが、9年前にがんで他界。
その後は順子さんが店と一信さんの味を引き継ぎ、スタッフの女性と2人で店を切り盛りしてきました。
そしてこの冬、ある決断をしました。
イタリア料理ピアノピアノ 笹島順子オーナー
「(お客さんに)残念がられるうちに辞めたが花かなと思いました。輸入品は特に上がり方が半端なくて。限度がありますよね。お客さんが食べれないような値段にできないし」
「ピアノピアノ」は12月15日(日)に最後の営業日を迎えます。
今、全国の飲食店などを閉店や倒産に追い込んでいる物価高。
帝国データバンクの調査によると、仕入価格の上昇で収益が維持できず倒産したいわゆる「物価高倒産」の上半期の件数は、この6年間で8倍以上に増加し、過去最多を更新しました。
この店では、食材の多くをイタリアから仕入れていますが、オリーブオイルに至ってはここ1年で倍近く値上がり。
今年に入って1度料理の価格改定をしましたが、それでも吸収しきれない上げ幅だといいます。
イタリア料理ピアノピアノ 笹島順子オーナー
「いろんな決済でもキャッシュレスとかありますでしょ。ああいうことが面倒くさいというかついていけないのは確かにあるし、かなり疲れまして…」
物価高に加え、飲食店を取り巻く環境の変化、体力面なども考慮し閉店に踏み切ったとのこと。
閉店の話を聞きつけた馴染みの客が連日つめかけ、取材したこの日もランチタイムは満席となっていました。
客
「こうやって同級生と会う場所でもあったので、その場所が無くなるのはすごく寂しいです」
かつては自らも客として通っていたというスタッフも、思いがこみ上げます。
イタリア料理ピアノピアノ 宮城裕子さん
「マスターに習えたのは私の一生の宝なので、もう1回何とか頑張って、ピアノピアノができたらとは思います」
順子さんは閉店するその日まで、夫・一信さんから引き継いだ味を提供し続けます。
イタリア料理ピアノピアノ 笹島順子オーナー
「寂しいですけど区切り付けて、前見てと思っています。しばらくぼーっとして。本当に42年間ありがとうございました」
惜しまれつつ閉店の近づくピアノピアノ。
ランチ・ディナー共にすでに営業最終日まで予約で埋まっているということです。
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