その道68年。カメラに人生を捧げてきた写真家がふるさと岡山の写真集を出版しました。その名も「ぐるり岡山」。岡山県全27市町村の四季を写しました。人生最後のシャッターは地元で切りたい…その思いとは。
真剣な眼差しでファインダーを覗く男性。まるで映画のワンシーンのようです。
(若林のぶゆきさん)
「カメラは私の命です。あると落ち着くんだよね。なんなのこれ。非常に落ち着くよ。いい歳になってもうわずかな人生でしょうけれど。岡山県で撮りたいなと」
自宅にコレクションされた二眼レフがカメラへの愛を物語っています。岡山市に住む84歳の写真家・若林のぶゆきさんです。戦後から昭和にかけて活躍した名機、その数はなんと162台。
正方形の独特な構図と、連写できないフィルムカメラならではの緊張感が魅力だといいます。
(若林のぶゆきさん)
「どうしたんだろうと思って。このために生きてきたかなと思って。もう本当にカメラ握って死にたいから」
人生は写真一筋。高校卒業後に岡山を離れると東京や横浜を中心に活躍し横浜開港150周年を記念した個展も任されました。
そんな若林さんが岡山に帰ってきたのは、5年前。帰省をする度、飛行機から見る山の美しさに惹かれ、もう一度ふるさとを拠点にすることを決めたのです。
(記者)
「この本が!」
(若林のぶゆきさん)
「私の愛する岡山。これを写した写真集が出来上がりました」
今年10月に出版した写真集「ぐるり岡山」。15年かけて岡山県内の四季を撮ってきました。
(若林のぶゆきさん)
「とにかく27市町村の美しい自然の風景を写したいと思ったわけですよ。私が見ていないところがいっぱいありそうだなと思って。そこから始まったんですよ」
霜が降りた高原 月の出と海ぼたる 一瞬の風景を狙い続けた
霜が降りた晩秋の恩原高原。早朝しか撮れない一瞬の風景を何度も狙いました。
月と瀬戸内海の夜を幻想的に表現した写真。絵を描くようなイメージで撮影したといいます。
【月の出と海ぼたる】
(若林さん)
「ちっちゃいお月さんが出るんですけどまん丸でしょう。これ(海ぼたる)は光らなければいけないし。それ(月)とこれ(海ぼたる)と合わせて。こいつは泣けてきます」
「楽じゃないですよ。きついところに行って。自分の理想の美しさ。自然の厳しさ。そういうものを撮るんですよ」
若林さんが、本格的にカメラを始めたのは高校生の頃でした。
(若林のぶゆきさん)
「大おばあちゃんに買ってもらったカメラ」「のぶゆき若林」「もうこれから始まったって感じですね」
若林さんの原点ともいえる写真集です。若林さんの写真家精神を呼び起こしたのが子どもで賑わう漁村・下津井の素朴な風景と瀬戸内海の美しいパノラマ。時には、岡山市内から自転車で通い、写真に収め続けました。そしてその日々が風景画を撮るきっかけにもなりました。
(若林のぶゆきさん)
「子どもたちも裸で走り回って、タコ壺がいっぱい転がっていて、一生懸命、飯盒にご飯を持って行って撮った。本当に好きなんですよ写真が。子どもの頃のことがずっと続いていくんだと思いますよ」
妻は「私が一番のファン」
あれから68年。きょうも若林さんは写真を撮り続けます。妻の治子さんも、二人三脚で歩みを共にしてきました。
(妻・治子さん)
「瀬戸内海やっぱりきれい。お天気いいし気持ちがいいわね。いいの撮れました?」
(若林のぶゆきさん)
「まあまあです」
「奥さん怖いですよ。やっぱり。奥さん怖いけど写真を撮るときには絶対必要な人なんですよ」
(妻・治子さん)
「私が一番のファンだと思っているので。私が素敵ねって言えば大抵の人が素敵ねって言ってもらえるんじゃないかなというふうに」
ここは、写真集の撮影で何度も訪れた場所。若林夫婦が見つけた岡山で一番のスタジオです。
(若林のぶゆきさん)
「写真集のトップページに載っているのが(瀬戸内市の)錦海湾。もう毎日来る度に太陽の形も違うしね雲の形も違うしね空が焼けるのも違うからね。もうすごいですよ。」
その日その場所でその瞬間にしか切り取ることができないー世界で一枚の写真です。
(若林のぶゆきさん)
「自分が感動して写しているからこそ皆さんも感動してもらえる。感動が多いほど見ている人もあっキレイいいな。あっ行ってみたいな。こうなるんですから。こういうのが何枚撮れるかっていうのが私の使命」
写真家・若林のぶゆき84歳。集大成にと選んだふるさと岡山の地でシャッターを切り続けます。
【スタジオ】
「ぐるり岡山」は、アマゾンや楽天でインターネット販売しています。本屋での購入は、予約注文をお願いします。若林さんは今後も岡山県の風景を撮り続けたいということで「命ある限り頑張りますので期待していてください」とも話してくれました。
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