祭りやイベント、初詣など、思い出を彩るのは出店の食べ物かもしれません。しかし、アレルギーなどでみんなと一緒に楽しめないという人のために、高校生らが調査を続けています。手探りで課題に取り組む高校生の姿を追いました。

生徒聞き取り調査
「例えばなんですけど、アレルゲン物質が書いてあったりとか原産国が書いてあったりとか添加物が書いてあったりとか…やっぱり、アレルゲン物質とか書いてあったら選びやすいかな」

アンケート用紙を手に聞き取り調査をするのは山口県立下関西高校の生徒です。
この日は下関市内のイベント会場で、訪れた人たちにイベントでの食べ物について考えを聞き取りました。

下関西高校探究科2年生 中田銀時さん
「露店に関して食材の情報、例えばアレルゲン物質だったりとか添加物だったり、原産国など記載がないんですけど、それで困ってる人がいるんじゃないかって、それで困っている人がいるんじゃないかって私たちは考えて、それを解決する方法を模索しながらアンケートを行って情報収集を行っています」

外国から来た人をもてなしたり、留学先でイベントを楽しんだりするとき、食べ物が壁になることはないのか。

おもに英語を中心に学習を進めている生徒たちは、そうした心配を研究対象に、調査を始めました。

答えのない問題 どう答えを探すかが問題

下関西高校は県内有数の進学校で、毎年、難関大学の合格者を出しています。下関西高校の中でも、探究科は自ら考える力に重きを置いてます。


岡田省吾教諭
「将来社会に出たときに答えのないような課題に出会うことも多いと思いますが高校生らしく自分たちの意見をまとめて、いろんな場面を捉えては発表していくと
いう活動を繰り返し行っているのが探究科になります」

手間、コスト…提供側の思いとすれちがいも

調査の2日前、生徒たちは小麦粉の代わりに米粉を使ったパンをつくる店を訪れました。

小麦は3大アレルゲンのひとつで、アレルギーの人が食べると重篤な症状を起こす恐れもあります。

オーナーの原田さん夫婦は、小麦のアレルギーのある人にもパンを食べる幸せをと、アレルギーの心配が無い米粉でパンを焼いています。

生徒たちは提供する側の思いや、食べ物を安心して口にするにはどんなことができるかを聞いて、問題解決への突破口にできないかと考えました。

生徒
「祭りのお店の方と協力してQRコードみたいなのをつくって…」

生徒たちは消費者への情報提供について考えていた対策をぶつけますが、原田さんから厳しい現実が突きつけられました。

米粉88原田修平さん
「そもそも食物アレルギーに対する知識がない人が多くて『アレルゲン物質が入ってますか?』っていう質問に対して、答えられない人がかなりいらっしゃると思う」

提供する側にアレルギーについての認識がなければ、情報を提示する以前の問題です。また、多すぎる情報は消費者を混乱させます。

米粉88原田修平さん
「どこまで気にされてどこまでの情報が欲しいのかというのは個人的にはどう思いますか?」

原田さんは生徒たちの思いを尋ねました。

中田銀時さん
「自分は気にすることといえば、添加物もそんなに自分は料理とかしなくて気にしたことはなくて、気にするのはどこの国でとれたかとか…」

原田さん
原産国?

アレルギー、宗教など、食べられない理由はさまざまですが、議論の行き先は少しずつ定まらなくなってきました。

原田さん
「どうですか?」

梅田さん
「…国産の方が…おいしいんで…」

小麦粉を米粉に代えればアレルギー問題は大きく解決に進むと考えましたが、簡単ではありませんでした。

米粉88原田陽子さん
「吸水率がお米の質で変わってくるので、水加減で膨らむ膨らまないとかもあるので」

小麦粉と比べれば材料費もかかるうえ、つくる人の技量によって味は大きく違ってきます。

高校生たちは何を調べるべきか、どんな解決策を示すのかをゼロから練り直すことになりました。

中田銀時さん
「ぼくたちは今までお客さんの目線で考えてきてばかりいたからかみ合ってないなというのを感じたんですけど、かみ合ってないっていうのは、原田さんはお店側の視点に立ってるからで、そういう視点がぼくたちにも必要なのではないかなって」

あれもダメ、これもダメ、食べさせてやれないつらさ

調査当日。

イベントには県内外からおよそ20の店が出店しました。

このイベント、じつはアレルギーのある人たちにも安心して楽しんでほしいと企画されたもので店先にはアレルギー対応の食品が並びます。

たこ焼きも米粉。

天ぷらも小麦粉ではなく、米粉で衣をつくっています。

福岡から出店
「アレルギーの方にね、みなさんに天ぷら食べていただきたくて」

このイベントではおもなアレルゲンとされる小麦・卵・乳製品・ナッツの4つについて使われているかどうか店頭に大きく表示しています。

小さい子どもを連れた母親
「食べれるものが無いんよね、お祭りに行ってもあれはダメこれはダメって言っちゃうんで、たべたいねえ、きょうはなんでもたべられるもんね」

国は、アレルゲンとして28品目を定め、そのうち8つについては表示を義務づけていますが、これは製品として売られている食品に限られています。

下関保健所によりますと祭りなどの露店は一定の条件の下で届け出をすれば出店が可能で、アレルゲン物質の使用の有無を表示する義務はありません。

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