2017年、大阪・東淀川区の住宅で当時2歳の女の子が死亡、傷害致死罪などで起訴されたのが義父の今西貴大さんです。約5年半にわたる身体拘束、そして逆転無罪判決。今西さんは、「独房で過ごした5年半、くじけずにたたかい続けてよかった」と喜びをにじませました。一貫して無罪を主張してきた今西さんと弁護団、その歩みに密着しました。

今西貴大さん「今は頭真っ白です」

 11月28日午前10時半、大阪高裁で出された「逆転無罪」の判決。被告となったのは今西貴大さん(35)。2歳の娘を虐待し死亡させた罪などに問われていました。一貫して無罪を訴えるも一審は有罪判決。しかし、二審で一転無罪が言い渡されました。
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 (今西貴大さん)「今は頭真っ白です。まだ、すごく嬉しいしホッとしています」

 なぜ判断が大きく変わったのでしょうか。

判決を前に「異例の保釈」決定していた

 今年7月、大阪拘置所から出てきた今西さんは、傷害致死という重い罪で一審で有罪判決を受けながら控訴審の判決を前に異例の保釈が決まりました。外の世界を見るのは約5年半ぶりです。

(今西貴大さん)「(刑務官に)『今から扉を開けるからな』と言われて開いた瞬間に光がいっぱい入ってきて、びっくりしました。こんな明るいの久しぶりに見たわと。(外の景色が)めっちゃ懐かしいです。いっぱい色があるから目がすごい」

 今西さんは子どもを虐待して死なせた親という汚名を着せられてきました。2017年9月に結婚した今西さん。妻(当時)の連れ子だった希愛ちゃんを養子にしました。結婚前から、よく面倒を見、「パパ」と言って懐いていたといいます。

(今西貴大さん)「出会った時は1歳だったから歩き出したくらいやって、公園はほぼ毎日いってたから、記憶には強く残ってます」

 異変が起きたのは2017年12月のある夜でした。体調が悪かったという希愛ちゃん。妻は外出中で今西さんが自宅で一人で面倒を見ていました。一緒に布団で転がっていたところ、突然「うっ」と声を出し身体を硬直させ、呼吸をしなくなったといいます。
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(今西貴大さん)「考えれば考える程リアルだから、あまり思い出したくない。両手の中で一気に状態が変わったから頬を叩いた時の感触も覚えているし、心臓マッサージをした時も覚えているし、救急車に乗ったのも覚えています」

 今西さんは自ら119番通報。希愛ちゃんは病院に搬送され、一旦は蘇生したものの一週間後に亡くなりました。警察は死亡から約1年経って今西さんを逮捕。今西さんは何らかの方法で希愛ちゃんの頭に暴行を加えて死亡させた罪などに問われることになりました。

 一貫して無実を主張しましたが、2021年、一審・大阪地裁は「被告人を懲役12年に処する」(裁判長)
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 今西さんの暴行により出血を伴った脳の損傷を負わせ心肺が停止した、と認定。今西さんは即日控訴しましたが、拘置所の独房に勾留され続けることになりました。

弁護団が見つけた「炎症のあと」

 争点となった希愛ちゃんの「頭の中の出血」。しかし、頭の外側にケガはありませんでした。そこで、弁護団が心臓の組織を調べたところ炎症のあとが見つかりました。暴行ではなく心筋炎という病気で心肺が停止した可能性が浮上しました。

 では、なぜ「頭の中に出血」があるのか。弁護団は専門家を訪ねました。

(川﨑拓也弁護士)「(検察側は)出血が多いから外傷だと言っているんですが」
(国際医療福祉大学・松野彰教授)「外傷だから多い、内因性(病気)だから少ないと言う議論は全く間違っている」

 専門家によると、いったん心肺が停止すると酸素が行き届かなくなり脳の血管などが弱ってしまいます。その後、蘇生して心拍が再開すると一気に脳へと血液が流れます。すると、弱った血管が破れ出血する可能性があるというのです。

 2023年5月、控訴審が始まりました。今西さんは一審判決後から、拘置所での面会や手紙でのやり取りに応じ、(取材に対して)控訴審への期待を語ってきました。
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(今西貴大さん)「やっと待ちに待った控訴審の第一回公判がおわりました。当日の朝はすごくドキドキしていました。正義の裁判が行われると信じてやみません」

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