年収103万円を超えると所得税がかかるいわゆる「103万円の壁」について、働き控えの一因ともいわれる中、その見直しを巡って、政府与党の議論が本格化しています。

「103万円の壁」が引き上げとなれば、鹿児島の経済や暮らしにプラスになるとの見方もある一方で、課題もあるようです。

103万円の壁。街の皆さんはどのくらい関心を持っているのか、聞いてみました。

「妻は働きたい、働きたいと言うので、壁がなくなれば今よりも少しはいい生活ができるのかなと思う」

「全然分からない」

「全然分からない。まだ結婚もしていので自分にはあまり影響ないのかなと思う」

「仕組みが分かりづらい」との声も聞かれました。103万円以外にも、年収が増えるごとに税などの負担が生じる様々な「壁」があり、仕組みがちょっと複雑なんです。

まず、住民税がかかる年収ライン100万円の壁、国民健康保険や国民年金などの支払いが必要になる106万円や130万円の壁。

そして、今回焦点となっているのが、所得税がかかる103万円の壁です。

所得税は収入103万円までなら、基礎控除と給与所得控除で税負担が軽減され、103万円を超えた分が課税対象となります。

特に影響を受けるのが、学生などの親です。
子どもの年収が103万円を超えると親の扶養から外れます。

例えば、大学生の子どもの年収が104万円で、1万円超えた場合、本人が負担する所得税は500円です。

負担が大きいのは親です。親は、63万円の特定扶養控除が受けられなくなり、その分の税金を支払うことになります。

親が年収500万円だとすると、所得税5%、住民税が10%で最低でも、63万の15%=9万7500円の負担が生じます。親の年収が多いほど、税率が上がるため、負担は多くなります。

さらに、子どもが扶養から外れるため、会社の扶養手当も無くなり、企業よって異なりますが、年間で数十万円ほどの手当てが受け取れなくなります。

この103万円の壁でもう1つ問題になっているのが、この額を超えないように勤務時間を抑えてしまう、働き控えです。

天文館の焼鳥店です。学生を中心にアルバイト14人が働いています。

これから、年末の忘年会シーズンを迎えますが、14人のうち3人が年収103万円目前となっていて、シフトの細かな調整に追われています。

(大衆やきとり 頂 末吉雄典店長)「繁忙期なので、できるだけスタッフにも入ってほしいが、早上がりしてもらったり、遅く来てもらったり、少し削ったりして12月に入ってもらえるようにしている」

鹿児島市の専門学校に通う中島優太さん(19)です。週に2~3回、1日6時間勤務し、今月までの収入は95万円ほど。1人暮らしの家賃や光熱費などに充てています。

(アルバイト 中島優太さん)「掛け持ちもしたいし、もっと稼ぎたい。バイクが好きで、もっとバイクのカスタムとかしてみたい」

一方で、10月の最低賃金の引き上げに伴い、店の時給は、7年前のオープン当時は830円でしたが、今では1000円に。しかし、103万円の壁は、1995年以降、変わらないままです。

(大衆やきとり 頂 末吉雄典店長)「稼げる金額は変わらないので、スタッフも物価も上がる中で好きなこともできない。店側ももっと入ってほしいけど入ってもらえないので、引き上げてほしいという気持ちはある」

時給が上がる一方で、103万円の壁はこの30年近く変わらず、結果、働き控えにつながってしまいます。政府は今月22日、「103万円の壁」を見直す総合経済対策を閣議決定し、議論が本格化しています。

一方、県は税収への影響を懸念しています。

県は、仮に103万円の壁を178万円まで引き上げた場合、県と市町村であわせておよそ415億円の減収になるとの試算を明らかにしています。

(塩田知事)「人手不足の解消には一定の効果があると思うが、見直しを行うにあたっては、税収への影響があるので十分配慮しながら検討を進めていただきたい」

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