埼玉県春日部市で駅前のシンボルでもあったイトーヨーカドーが52年の歴史に幕を閉じました。多くの「ファン」が見送りましたが、その心境はどんなものだったのでしょうか。

「思い出たくさんだったのに」イトーヨーカドー春日部店、52年の歴史に幕

山内あゆキャスター:
24日、イトーヨーカドー春日部店が、52年の歴史に幕を下ろしました。

イトーヨーカドー春日部店は「クレヨンしんちゃん」の聖地としても知られていました。作品の中では、イトーヨーカドーをもじって、「サトーココノカドー」という名前で、マークも鳩ではなくて、コウモリです。

SNSには「しんちゃんの聖地閉店…ショック!」「世界観が身近に感じられてワクワクした思い出がたくさんだったのになー」という声がありました。

全国で相次ぐイトーヨーカドーの閉店 背景に“専門店” “車の普及”か

山内あゆキャスター:
イトーヨーカドーの閉店は全国で相次いでいます。

2023年3月に発表された構造改革によると、2026年の2月末までに33店の閉店が決まっています。特に、北海道、東北、新潟、長野は全てのイトーヨーカドーが閉店になります。

イトーヨーカドーは、“何でも買える”「総合スーパー」です。例えば、下の階では生鮮食品、上の階では衣類や寝具なども購入できるというように、一つの店舗で衣・食・住が揃うという点が「総合スーパー」の良さでした。

ただ今は、洋服ならユニクロ、家具はニトリというように専門店が増え、消費者にとっては選択肢が増えました。

さらに、郊外や地方では、一家に1台、1人1台というように車が普及してきたことで、買い物をする場所が駅前から、ロードサイドの店舗へと変わってきました。

流通アナリストの中井彰人氏は、「週末の買い物が衣・食・住から、時間消費型の楽しみ方が増えた衣・食・住・遊に変化」としていて、「遊」の部分もとなると、「総合スーパーだけでは…」と変化しているようです。

総合スーパーのコンセプト「“ついで買い”が無くなってしまった」

ホラン千秋キャスター:
私も小中学生のときに遊びに行くといえばイトーヨーカドー一択というほど支えられましたので、閉店を惜しむ気持ちもすごく共感できます。地元で長く愛されていても、専門店が出てくる中で生き残るのは難しいのでしょうか。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
何でも買える総合スーパーの一番のコンセプトは「ついで買い」です。つまり、毎日需要のある食品は利益性が低いので、利益性の高い衣類や日用品の「ついで買い」が重要でした。専門店の増加によって、その「ついで買い」が無くなってしまったということです。

全国のイトーヨーカドーの売り上げが、2005年は約3000億円でしたが、13年後には半減し、1500億円ほどになっています。セブン&アイ・ホールディングスも、もうイトーヨーカドーではなく専門店や、あるいはモールのようにもっと大きくするという逆のコンセプトの両方で戦略を練っているようですね。

井上貴博キャスター:
「クレヨンしんちゃん」が始まった1990年代は、駅前の大型スーパーの存在感が大きく、地域の文化の中心にいたようにも感じます。時代の移り変わりで厳しくなるのは理解できますが、そういうものは今の時代も必要だと思います。閉店後はどう変わっていくのでしょうか。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
春日部店の跡地については、まだ決まっていないようですが何かができるはずですから、また新たな思い出・文化が生まれるのではないでしょうか。それを期待するしかありません。

過去は過去で、それはいいものだと受け止めながら次にいくことが大事なように思います。

跡地は何に?“津田沼店”は新たなランドマークに

山内あゆキャスター:
「跡地はどうなるのか」という点ですが、9月に閉店したイトーヨーカドー津田沼店は、イオン×京成電鉄の新たなランドマークとなる商業施設になるそうです。

新津田沼駅の北側にはイオンモールがありますが、さらに南側のイトーヨーカドー津田沼店の跡地には新しい商業施設ができ、映画館やイベントホールなどのまさに衣・食・住・遊の「遊」の部分に変わっていくということです。

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<プロフィール>
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック・アース製薬の社外取締役など

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