毎年4月から6月は狂犬病の予防注射月間とされています。
狂犬病は、人も犬も発症するとほぼ100%死に至る危険な感染症ですが、犬への予防ワクチンの接種率は7割にとどまっています。
なぜ接種率が伸び悩んでいるのか?取材しました。

飼い主に連れられ、続々と犬がやってきたのは…、狂犬病予防ワクチンの接種会場です。

されるがままの犬もいれば…注射におびえ、震える犬。なんとか逃れようとする犬や、歯をむき出しにして耐える犬もいました。

そもそも狂犬病とはどんな病気なのでしょうか?

狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染した動物の唾液や血液が、体内に入ることで感染する病気です。名前に「犬」と入っているものの、人を含めた全ての哺乳類が感染します。

1度感染すると、人であれば発熱や幻覚などが起き、最終的には昏睡状態に。人も犬も有効な治療法はなく、致死率はほぼ100%です。

おもな感染源が犬のため、年に1回のワクチンが飼い主に義務付けられています。

ところが今年2月、群馬県で飼われていた四国犬が逃げ、公園で遊んでいた小学生ら12人がかまれました。その犬が、狂犬病ワクチンを受けていなかったことが問題となりました。

(県生活衛生課 迫田豊秋課長)「令和4年度(接種率)は全国でいうと70.9%、鹿児島県でいうと74%となっている」

県によると、県内の狂犬病ワクチンの接種率は過去10年間、7割程度にとどまっています。全国平均よりはやや高いですが、おととしは、県内に登録されている犬の3割、およそ1万8000匹がワクチンを受けていません。

接種率が伸び悩む背景の1つが…。

(県生活衛生課 迫田豊秋課長)「日本での人の感染は、1956年以降はない」

日本国内で犬などにかまれ、発症したケースはおよそ70年、確認されていないからです。

一方で、隣の韓国や中国など世界のほとんどの地域では、今も発生。2016年には旅行先のフィリピンで犬にかまれた日本人男性2人が、帰国後、狂犬病を発症し、亡くなりました。

(県生活衛生課 迫田豊秋課長)「世界では年間5万人以上が狂犬病で亡くなっている。海外との交流が大変盛んな状況なので、いつ日本に狂犬病が侵入してきてもおかしくない」

国内に侵入した場合に備えた対策が、犬への予防注射です。

(飼い主)
「日本はすごいなと思って、海外は狂犬病がまん延しているが、やっぱり怖い病気のひとつではあるから」

「もし(犬が)離れて、なにかあったときが心配なので」

国は、毎年4月から6月をワクチン接種の強化月間としています。県内すべての自治体で行っている集団での接種のほかに、指定の動物病院でも受けられます。

鹿児島市の場合、市中心部は動物病院で、動物病院の少ない喜入などの旧5町は、獣医らが公民館などをまわり接種しています。

費用は、自治体や病院によって異なりますが、3000円から4000円ほど。飼い犬にワクチンを受けさせていない場合は、20万円以下の罰金の対象です。

毎年、飼い主には住んでいる各自治体から接種の案内がありますが、引っ越しなどをした時には犬の登録変更も必要です。

(県生活衛生課 迫田豊秋課長)「新たな所在地の市町村に届け出を出す、狂犬病の規定でもある。詳細を市町村の担当部署に確認すること」

いつ日本に侵入してくるかわからない狂犬病ウイルス。大切な飼い犬、大切な人の命を守るためにも、年に1度の予防接種が大切です。

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