全国で初めて、航空自衛隊・那覇基地に設置されているのが明らかになった「退避壕」。今後は全国各地の基地などに設置されるといいます。有事を念頭に置いた自衛隊基地内の動きを県民はどう捉えているのでしょうか。

▽那覇市民
「万が一に備えて作っていたというのであれば、仕方がないと思う。それを “想定” して作ったのであれば怖い」

「着々と既成事実を作り上げて、頭ごなしに有無も言わせず、沖縄県民にすべてを丸投げして、それでいて日本の安全が保たれているかのような今の状況はよくない」

危機管理の専門家は「むしろこれまで遅れてきた」

▽日本大学危機管理学部 中林啓修 准教授
「隊員の防護を図ること自体はとても大切なことで、自衛隊はむしろこれまで遅れてきた」 

那覇基地内に建設された退避壕

危機管理が専門の中林啓修准教授は、退避壕を建設は必要な対応だったとする一方で、基地のなかで機能強化や有事への備えが進んでいくことに対する住民の懸念にも理解を示します。
 
「(周辺住民は)自分たちの地域がどうなっていくのか、あるいは政府などがどう(対応を)しようとしていくのかと、不安に思われておかしくない」

ロシアはウクライナ侵攻直後に「飛行場」を攻撃

防衛省関係者は、戦争が起きると戦闘機などが離着陸できないよう「まずは滑走路などが標的になる可能性がある」と指摘します。

現実に2022年、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった直後に巡航ミサイルが着弾したのは、軍民共用の飛行場でした。

ウクライナでは軍民共用の飛行場が侵攻直後に攻撃された(2022年)

退避壕の建設は台湾有事など「不測の事態」を想定したものですが、ロシアが実際の戦争で飛行場を攻撃したことも意識されています。

▽沖縄国際大学・前泊博盛教授
「有事・戦争になることを前提に整備されている」「退避壕そのものが前提にしていること(ミサイル攻撃)が、国民・県民にとっては非常に乱暴な事態想定」

自衛隊の機能強化、有事への備えが進むなか、日々、基地と隣合わせで暮らす県民にとって疑問になるのが「住民の保護」ですが、航空自衛隊の制服組トップは21日の会見で次のように述べています。

(記者)民間人の保護については現在国や自治体とも十分な実施されていないのが現状…
▽内倉浩昭 航空幕僚長:「私どもの所掌外でありますのでお答えについては差し控えたいと思います」

民間人保護は「所掌外」と述べる内倉浩昭航空幕僚長

▽沖縄国際大学 前泊博盛教授
「退避壕ごときで収まる戦争には今の時代ないということを考えても、他の地域から見ても、この日本という国の安全保障は何から何を守る安全保障になっているのかっていう、この本質的な問いが必要な時代になっていると思いますね」

基地の中で有事を前提にした動きが進むなか、「国民保護」は自治体の責任とされ、県民の安全についての議論は進んでいません。

▽沖縄国際大学・前泊博盛教授
「新たな戦争の動きにつながらないように外交的努力も必要ですし、政治家同士の信頼関係みたいなものをしっかりと構築して、誤った戦争に行かないように防波堤を張っていく、未然に防いでいくということが重要」

(取材 平良優果)

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