「インタープリター」という言葉をご存じでしょうか。観光客に地域や自然などの地域資源の魅力を自分の経験を交えて効果的に伝える次世代のガイドのことです。
地震や豪雨で被災した能登の観光地の復興や被災地応援ツアーなどのガイド需要の増加を見据えて、「能登の今」を伝えるインタープリターを養成する取り組みが、能登で始まっています。
観光ガイドの研修「皆さん田んぼというと四角い田んぼを想像される方が多いと思いますが、千枚田は全然四角くないですね。それはもともと山の斜面を利用して作った田んぼになるからです」
19日、石川県輪島市の千枚田で観光地ガイドの実習が行われました。
学識経験者や大手旅行代理店などでつくる県ツーリズム・イノベーション・コンソーシアムでは、観光庁の支援をうけて新たな観光のプログラムと観光ガイドの養成に乗り出しています。
目指すのは「インタープリターガイド」。その場所のなりたちや魅力、復興に向かう「能登の今」を自分の体験談などを交えて解説し、観光客と能登のつながりを作るガイドです。
養成講座に参加するのは、アウトドアの楽しみ方を伝えるネイチャーガイドや通訳などのガイド経験者だけでなく、これからやってみようという人もいます。
参加者「金沢大学の里山研究員を何年かやっていたことがあり、能登には行っていたので、人生残り10年か15年できるだけ恩返しをしたいとの思いもある」「県外出身で引っ越してきた。ぜひ能登の現状を見たいと思って参加した」
石川県ツーリズム・イノベーションコンソーシアム 小山基代表「観光がすごく大事だと思っている。その中でしっかりと能登の価値を伝えられる人や震災で起こったこと、今後注意すべきことなどを伝えられる人がすごく重要になってくる。そういう人を育成したいという思いがあった」
「パソコンの売り方」で観光ガイドを学ぶ
初日の講座では、インタープリターにとって必要な要素の一つをパソコンショップに置かれたノートパソコンの画面の角度を例えに学びます。
講師「なぜ、MACショップのノートパソコンは76度の角度で置かれているのか。わかりますか?なぜ」
参加者「お客さんに触れさせるため」
講師「見づらいですよね。見づらかったらどうしますか?触って自分の見やすい角度に調整するでしょう。人はモノに触ったりすると関連性が生まれる」
講師「見えにくいとさわって角度を変えますよね。そうするとどうなるか、そこに関連性が生れて欲しくなる。関連性が生まれると見ているだけでなくほしくなる」
ガイドをする人が、自分の体験や知識を交えて説明するものと観光客の間に関連があることを気づかせること。インタープリターとして大事な要素です。
いざガイド実習 体験談や問いかけを駆使して
初日に学んだ観光ガイドとしての心構えに続き、2日目はいよいよ実地研修に臨みます。受講者は観光地の現状を見た上でガイド実習に臨みます。
まず、グループに分かれて観光地で何について伝えたいかテーマや話題決めです。
受講生「海岸線がもとのところから伸びた。漁港という生活の場だったところがこれだけ変化したということが、地上とは違う意味、海で起こった地震の景色・風景も」
伝えたいことをまとめていざ、ガイドの体験です。
観光客の1人になって聞いてみてください。5分くらいの説明の一部です。
地盤が4メートル隆起した輪島市門前町の鹿磯(かいそ)漁港では。
発表者「船が3隻見えますが、2つの船は浮かんでいますが、1隻は転覆しています。ということは2つの船で今もここで生活している方がいるのかもしれません。転覆をした船の持ち主の方はこの町を離れて生活をされているんじゃないかなという風に感じます。地震は自然を大きく変化させたということと、平和に暮らしていた人々の生活を大きく変化させたことがこの漁港から皆さんに伝わるんじゃないかと思います」
インタープリターの手法として、問いかけや体験談を交えて相手の興味・関心をひくことも効果的です。輪島市の千枚田でのガイドです。
発表者「何で地震があった今年だから(作業を)やらなくていいのに何でやったんでしょうか?お米を作って1年間作業をして、今年を終わりましたという姿を、皆さんに発信していきたいからだなと感じています。一粒一粒お米をおいしくいただくときに米づくりの大切さとかその苦労を少しでも理解していただきながら能登の復興の一助にぜひこの千枚田に来ていただきたいのと、もしオーナーになりたい人いますか?いらっしゃいましたら応募してください。当たったらここで作業ができます」
被災地の経営者から生の声を聞くことも学びのひとつに
また、輪島塗の工房では輪島塗の成り立ちや特徴だけでなく、なりわい再建の取り組みについても工房の経営者から生の声を聞きます。
輪島キリモト・桐本順子副代表「(地震で)こういう器がいっぱい出てきたりする。輪島塗は強い作り方をしているので、直せるという特徴がある。それをいかして途中まで削って、もう一度新しい技法、新しい色で塗り替えて、再生するお直しだけでなく、生まれ変わらせる「REBORN」という企画をいましている。みんなのふるさとを一緒につくりませんか、みたいなツアーができたら、交流人口を増やしたら活気が出るのではないか」
石川県ツーリズム・イノベーションコンソーシアム 小山基代表「実際にこういうツアーができるようにする。次年度以降はインターぷりたーガイドを育成する仕組みを作っていく。」
養成講座を主催した県ツーリズム・イノベーション・コンソーシアムでは、2025年度からインタープリターガイドが語るインバウンド向けの観光ツアーもスタートさせたいとしています。
能登を襲った地震と豪雨では多くの犠牲が出ましたが、昔海の底だった能登半島は地殻変動によってできた土地です。
珪藻土は輪島塗に使われ、地元の産業として発展してきました。
人々の暮らしと自然のつながりなど現代の「語り部」=インタープリターを育てることが能登の関係人口を増やし、持続的な復興につながることに期待が高まります。
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