アメリカ大統領選挙が5日(日本時間6日)に投開票が行われ、共和党のトランプ前大統領が、戦前の予想を大きく覆して、民主党・ハリス副大統領に圧勝した。史上稀に見る接戦と思われたところ、最終的には538人の選挙人のうち、トランプ氏が300人を超えると見られている。投票日直前まで支持率も全くの互角と思われた中、なぜここまでの大差が生まれたのか。『ABEMA Prime』では、今回も含めてトランプ氏の大統領選に3度関わったスタッフとともに今回の勝因と、第2次トランプ政権として注目される動きを分析した。
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■アンチトランプ 対 プロトランプ 結果はトランプ氏圧勝
戦前の予想では、支持率も完全に互角、もしくは差がついたとしても0.1ポイントというほど激戦と思われていた今回の大統領選。ところがいざ開票されてみると、次々にトランプ氏が各州を制し、激戦州と言われる7つで全て勝利。さらには長年に渡り民主党支持だった州まで奪還するなど、まさに完勝という結果だった。
ハードロック・ジャパン社長で、トランプ氏の大統領選に2016年、2020年、そして今回の2024年とスタッフとして関わったアド・マチダ氏は、勝因について「共和党 対 民主党だとか、保守派 対 リベラル派ではなく、ある意味ではアンチトランプ 対 プロトランプ、ないし東海岸・西海岸のエリート思考の人々と、ラストベルトにいる労働者の戦いだった。共和党の党大会のテーマでもあった忘れ去られた人『Forgotten One』のために俺は働いているんだというメッセージがかなり伝わったのでは」と述べた。
少数のエリートから支持を受けるハリス氏に対し、ブルーカラーから一般国民まで広く支持を集めたトランプ氏という構図になったとし「メディアでは、なんでトランプみたいな人に票を入れるのかというコメンテーターもかなり多く、アカデミックな人々のアイデンティティ・ポリティクスを主張していたが、一般国民やブルーワーカーはそんなことは気にしていなかった。逆に経済情勢、不法移民、自分の毎日の生活、今日と4年前の生活はどっちがよかったといえば、4年前の方がよかった。変化は必要で、トランプに票を入れてもいいと思ったのでは」と分析した。
ハリス氏の敗因側から見解を述べたのは、明治大学・政治経済学部教授の海野素央氏だ。「ハリスさんの勝ちパターンは異文化の連合軍だった。つまり黒人、アジア系女性、ヒスパニック系、若者の票を組み合わせて勝つはずだったが、トランプさんはこの黒人とヒスパニック系に目をつけた。なぜかと言えばハリスさんは黒人の女性。黒人男性は黒人女性に対して、蔑視したり軽視したり、あるいは過度な嫌悪感を持っていて、ハリスさんは黒人男性の票を集めることが実際できなかった」と、本来は黒人層からの支持もまとめられるものと思われていたところが、逆にトランプ氏に票を奪われる結果になったという。
またヒスパニック系については「アメリカで生まれた合法的なヒスパニック系と、流入してきた違法なヒスパニック系がいる。トランプさんはその対立構図を煽り、合法的なヒスパニック系の利害が不法なヒスパニック系によって侵害されていると敵対心を植え付けた。票を持っているのはもちろん合法的なヒスパニック系。その戦略も当たったと思う」と説明した。
これにマチダ氏は、トランプ陣営側として「我々から見れば、別に黒人男性やヒスパニック系の男性をターゲットにしたとかっていう風には考えていない。逆に労働者像は黒人であろうとも白人であろうともヒスパニック系であろうと関係ない」と否定した。
また作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は「オバマ政権時代から考えると、もう20年近く何とか中流の崩壊と分断を何とかしなきゃいけないとずっと言い続けていたのに結局誰も変えてくれなかったことに対する問題で、労働者階級だけではなくて、知識階級も含めてこのまま放っておいても全然変わらない、ということに対する危機感があった。トランプになんか誰も入れたくないけれど、もうトランプに破壊させるぐらいしか方法がないのでは、というのがアメリカの民意の帰結になっているという印象だ」と語った。
■トランプ氏が1対1で交渉、戦争は止まる?
2度目の政権を握ることになったトランプ氏は、国内的に経済政策と移民政策を大きなテーマに掲げていたが、国外とはロシア・ウクライナ間による戦争、さらに中東情勢への関与が、緊張感を持って注目されるところだ。マチダ氏は、まずロシア・ウクライナ戦争について「かなり踏み込んで、ゼレンスキーとプーチンにワシントンに来い、話をしよう、何らかの形で条約を作ろうという主張をするのでは。いろいろな国で紛争が起きれば、ある程度アメリカの兵隊もいずれは送り込まなければいけない恐れがあるので、それを何とかして止めたい。従って今の段階で、何らかの形で収めるということはあると思う」。さらに中東情勢には「もっと難しいのはイスラエル・ガザ問題。これに関してはどうアプローチするか討論しないといけない」と語った。
ロシア・ウクライナ戦争については、トランプ氏が大統領就任から24時間以内に終わらせると公言している。停戦、休戦など形は不明だが、この実現度はいかなるものか。このまま停戦、休戦ともなれば、ウクライナは領土を奪われたままということになる。佐々木氏は「自由で平和な西側諸国という理念からすると、ここでウクライナが領土を取られたまま休戦に至るというのは非常に許し難く、それはウクライナ国民としても許しがたい話」とした上で、トランプ氏が得意とする1対1で交渉する「ディール」の危険度を警戒した。「トランプは常にディールという2国間交渉で全てを解決しようというポリシーで、前回の大統領もやってきた。今回もおそらくプーチンと1対1で交渉して『ここまでお前にやるから、ここでウクライナ戦争を終わらせる』みたいな交渉する可能性はあると言われている。領土が取られたまま戦争を終結させるっていう行為に対して、我々はどういう態度を取ればいいのか、ものすごく難しい。戦争を終わらせなくてはいけないのは当然だが、領土を奪われた状態で終わらせるのが本当にそれで許されるのか。ウクライナがそれを望んでないのに休戦に持っていっていいのか議論をしないといけない」。
これにマチダ氏は「ウクライナとしての立場は何なのか。元の国境線に戻したいと言いたいが、結局ロシアとしてそれは許せないということであれば、ウクライナに有利なものを何か持っていかなきゃいけない。例えとしては、別にトランプ政権の人々と話していないが、ウクライナがNATOにある程度参入できるということがあれば、将来においては二度と侵害を受けないということになるかもしれない。ウクライナとしても何か得ないと成立しない」と見解を示していた。
(『ABEMA Prime』より)
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