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 5日(日本時間6日)に行われたアメリカ大統領選挙は、史上稀に見る大接戦という事前予想を覆し、共和党・トランプ前大統領が7つの激戦州を全て制するなどして圧勝。132年ぶりの大統領返り咲きを果たした。一方、初の女性大統領就任を期待された民主党・ハリス副大統領は、バイデン大統領の後を引き継いだ候補として、一時は支持率でリードしていたが、結果は完敗となった。激戦と思われていた裏側で、どんな“ハリス離れ”が起きていたのか。『ABEMA Prime』では、バイデン政権下でのハリス氏の実績不足、さらには男女の支持者が感じたとされる違和感について現地在住者を交え議論した。

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■まさかの完敗 どこで逆風が吹いたのか

 大接戦と予想された今回の大統領選。ところが開票が進むに連れて、次々とトランプ氏が重要な州で勝利。現地メディアの予想を超えるスピードで勝利宣言に至り、一夜明けてハリス氏も支援者の前で敗北を認める演説を行った。2ちゃんねる創設者のひろゆき氏も「トランプさんが勝つとは思っていたが、ここまで圧倒的なのはちょっと驚きだ。もう少し時間がかかると思っていた」と語るほどだ。

 サンフランシスコ在住でビートラックス代表のブランドン・K・ヒル氏は、トランプ氏への期待よりも、現状からの脱却について注目した。「経営者の友人やビジネスオーナーの人たちと話すと『大きな声で言えないけど、トランプになってほしい』という声は聞こえていた。ビジネスをやっている人は(バイデン政権の)4年間がしんどかったので、変化が必要だと聞いていたし、そうなるだろうと思っていた」と、インフレが進んだバイデン政権と、それを引き継ぐ形になるハリス氏を支持しなかったのではないかと述べた。

 国民の経済的な苦しみは、どれほどだったか。「僕が住んでいるカリフォルニア州は、超民主党の政治が行われている。バイデン政権の下に州知事がいて、下に市長がいるが全員民主党なので、民主党的ポリシーがものすごく強い。全世界的にインフレと言われているが、本当にコスト高がすごくて、どんどん物の値段が上がる。会社を経営している人からすると、仕入れコストが上がるケースもあるし、従業員の生活コストが上がっていくと、毎年給料を大幅に上げないと生活が維持できない。そうなるとスタッフを昇進、昇級させたという結果がなくても、インフレ調整で大幅に上げていかない苦しい状況だった」と実情を語った。生活ベースを上げるどころか維持するだけでも精一杯という状況は、経営側も従業員側も苦しんだ。

 ニュージャージー州在住のジャーナリスト・冷泉彰彦氏も、状況はカリフォルニア州だけではないと語る。「ニューヨークも全く同じ状況だ。卵が8ドル、場合によっては10ドルもする。治安の悪化についても、コロナ禍の時ホームレスの人が増えてひどくなったが、まだずっと続いている。『ちょっと現状やばいよね』みたいな感じは、人がたくさん集まっている東と西でもじわじわ進行していて、保守的な人がもともといるペンシルヴェニアなんかではガッとそれが出たところがある」と説明した。

 治安については、ブランドン氏も言及。「治安が悪くなっている状態の一つに、ドラッグ問題がある。道端にいるホームレスの方は8割、9割ぐらいが酒か薬をしていて、主にドラッグ中毒だ。トランプ政権が今回、謳い文句の一つに移民問題、国境問題を言っていたが、あれは不法移民がより一層増えたことで、ドラッグも一緒に入ってくるとすごく言っていた。違法ドラッグがどんどんアメリカ国内に蔓延して、都会を壊していく。民主党政権は、それに対して黙認しているので、町が壊れていく姿を見せられてしまった」と、国民の不安感が一層高まっていたと指摘した。

■よかったはずのイメージが足かせに?

 ハリス氏にしても、現状からの脱却は訴えていただろうが、なぜ支持が集まりきらなかったのか。理由の一つとして挙げられるのは、現職の副大統領としての実績不足だ。ブランドン氏は「一番大きいのは、ここ4年間副大統領をしてきた中で、具体的にあなたは何を達成しましたかと聞かれて、パッと言えるものがない気がする。あったら選挙活動で胸を張って言っているはず。彼女自身も、支持者にここ数年間の実績で、具体的なものに何があると思いますかと言えば『女性で有色人種で副大統領を務めているだけでもすごい』みたいな感じがあった」と、今でも政策を進められる立場であったにも関わらず、これといったものが残せていないことが、賛否はあれど大統領として動いた実績があるトランプ氏と比較された。

 また、一時は「ハリス旋風」とも呼ばれ、トランプ氏と真逆のイメージで有利に立ってもいたが、そのイメージに対して首を傾げる支持者も出てきたという。冷泉氏は、その笑い方に着目した。「あの笑い方はすごい。最初は軽薄だと言われていたのが、ある時期から、あれは女性の生きる喜びを表現しているのだと、若い女性を中心に支持された。そうしたら今度は逆に男の人たちが、『女子会がなんか盛り上がっちゃってる』みたいな感じになり『自分はちょっと引くよね』というものが出てきた」と、男性支持者との乖離が始まったという。さらにこれは女性側にもあるといい、ブランドン氏は「すごく一軍女子感がある。アメリカの中でも、ちょっとそこがどうかと思う感じはある。ハリスさんがしゃべっている英語は、結構難しい単語や表現を使っている。マイノリティとか移民とか、ラテン系の方で、英語を母国語にしてない方とかもいるので、ハリスさんの言っていることがわかりにくいとか、何か上から言われてマウントを取られたみたいに思っている人もいるみたいだ」と付け加えた。

 ハリス氏に対しては女性初の大統領、さらに中絶禁止を訴えるなど、女性から強い支持を受けると思われていたが、結果はそうならなかった。ブランドン氏は「女性のスタッフにも聞いたが、一言で言うと能力や実績が伴っていないのに、女性だとかマイノリティだというだけで重要なポジションを与えるのは、むしろ頑張って結果を出している女性に対して失礼だと。実績、結果の面で冷静に考えると男性だった場合に選ばれないのに、女性だから選ばれたら不公平ということだ」と述べた。

■女性初の大統領はいつ生まれるか

 イメージの面で、ハリス氏はどうすればよかったのか。冷泉氏は過去の候補者についても例に出しながら振り返った。「女性だと8年前にヒラリー・クリントンさんが同じような形で負けたが、あの時はお母さん的というか、『私が国を指導する』という、ちょっと上から目線的なものがあって、若者から反発を食らった。今回のハリスさんはやっぱりすごくソフトだったし、等身大の女性像を出すことに成功し、かなり広範囲に女性票を固めた。ただ問題は、男性の方がそれに対して反発する、ジェンダーの争いは出てしまった」。また、ブランドン氏も「どうやら黒人系の方々、アフリカ系アメリカ人の方々の文化には、女性が男性に仕える感覚がある。いわゆる昭和の親父みたいな感覚だ。黒人男性からすると、女性が上に立つことが生理的によろしくないというか、喜べない人がいるらしい。黒人男性が黒人女性をトップに選ぶのは難しいかも、というのを聞いてびっくりした」と添えた。

 ここで話題になったのは、同じ黒人として、一時は大統領候補になるのではと言われたのが、バラク・オバマ元大統領の妻、ミシェル・オバマ氏だ。ミシェル氏であれば、女性初の大統領になれたのか。冷泉氏は「ミシェルさんの場合だったらもう本当に苦労している人だし、それから純粋なアメリカ黒人で、いわゆるその奴隷時代を苦労した人たちの子孫。彼女は基本、肝が据わっていて、本当に優しい言い方をしないと届かないならそれができる人」と高く評価する。ただし、それゆえに立候補しないともいう。「同時に彼女がすごく何か背負っているものの大きさみたいなことに気がついていて、なおかつ国を引っ張っていくことの難しさも知っている。それゆえに彼女はやっぱり出ない。自分が出ることによって、もしかしたらうまくいく部分も大きいかもしれないが、より何か一部の人がひねくれて、ものすごく反発する部分もある。夫が8年間、これだけ国に自分の人生を捧げ、プラスアルファで自分がそれをやった時、本当に自分にとっても国にとっても差し引きでプラスなのかなと考えると、やっぱり出ない。ただ逆に彼女だったら(大統領は)できると思う」と語った。
(『ABEMA Prime』より)

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