11月5日、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ前大統領(写真)は、同氏が勝利したとのFOXニュースの報道を受けて勝利宣言した。写真は6日、フロリダ州パームビーチで撮影(2024年 ロイター/Brendan Mcdermid)

5日に投票が行われた米大統領選は、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が勝利し、4年ぶりにホワイトハウスに返り咲くことになった。国内の民主主義制度や米国の対外関係が試される公算が大きい。

エジソン・リサーチの予測によると、トランプ氏は中西部の激戦州ウィスコンシンでの勝利により、当選に必要な270以上の選挙人を確保した。

米東部標準時午前5時45分(日本時間午後7時45分)時点で、トランプ氏が獲得した選挙人は279、民主党候補のハリス副大統領は223となった。トランプ氏は一般投票でもハリス氏を約500万票上回った。

トランプ氏はフロリダ州パームビーチのコンベンションセンターで、家族や副大統領候補のJD・バンス上院議員、共和党指導者らと共に登壇し、勝利を宣言した。歓声を上げる支持者に向かって、「米国はわれわれに前例のない強力な権限を与えた」と語った。

また同氏の選挙運動に約1億2000万ドルを投じた起業家イーロン・マスク氏を称賛した。

トランプ氏は2回の弾劾訴追を受けた唯一の大統領となる。同氏は現在78歳で、米国史上最高齢で大統領に就任することになる。また連続しない2回目の任期を務めるのは、19世末のグロバー・クリーブランド以来2人目。

トランプ氏が2020年の大統領選でバイデン大統領に敗れ、支持者が選挙結果を覆そうとして連邦議会を襲撃した際には、同氏の政治生命は終わったとの見方が強かった。

しかし有権者が物価上昇に不満を抱いていることに加えて、不法移民による犯罪が増えているという根拠のない主張で不安をあおり、ハリス氏に勝利した。

バイデン氏の選挙戦撤退を受けて急きょ民主党候補となったハリス氏は、15週間の選挙活動で十分な成果を上げられず、経済や移民に対する有権者の懸念を和らげることもできなかった。

ハリス氏は母校のハワード大学に集まった支持者への演説を取りやめた。ハリス陣営の共同トップを務めるセドリック・リッチモンド氏は、ハリス氏は6日に公の場で演説する予定だと述べた。

<トランプ氏支持、2020年の選挙上回る>

今回の選挙でトランプ氏は、国内のほぼ全ての地域で4年前よりも多くの票を獲得した。

東部時間6日午前0時半(日本時間午後2時半)までに全体の約半分に当たる1600以上の郡で開票作業がほぼ終了し、トランプ氏の得票率は20年と比べて約2%ポイント上昇した。

郊外や地方に加えて、歴史的に民主党が強い一部の大都市にも支持を広げた。また高所得と低所得の地域、失業率が比較的高い地域と記録的な低水準の地域でも支持率を伸ばした。

ハリス氏は都市部と郊外でトランプ氏に大きな差をつけることを期待していたが、20年のバイデン氏の支持率よりもかなり低かった。

エジソン・リサーチの出口調査によると、トランプ氏は物価上昇の打撃を受けてきた低所得者層に加え、伝統的に民主党の支持基盤であるヒスパニック系からも支持を集めた。

ヒスパニック系有権者のトランプ氏に対する支持率は45%と、ハリス氏の53%に及ばなかったものの、20年から13%ポイント上昇した。

また経済を最大の争点としていた有権者、特に4年前よりも家計が悪化したと感じている有権者の多くがトランプ氏を支持した。

出口調査によると、有権者の約31%が経済が最重要課題だと答え、このうち79%がトランプ氏に投票した。また約45%が家計の状況が4年前よりも悪化していると答え、このうち80%がトランプ氏を支持した。

5日遅くには世界中の投資家がトランプ氏の勝利を織り込み始めた。米株式先物、ドル、国債利回りが上昇し、ビットコインも値上がりした。

<トランプの2期目>

トランプ氏の勝利は、米国の貿易や気候変動政策、ウクライナ戦争、税制、移民問題などに大きな影響を及ぼす見込み。

エコノミストは、トランプ氏の関税案は中国および米国の同盟国との間で激しい貿易戦争を引き起こす恐れがあると指摘する。また法人税の引き下げや一連の新たな減税の公約を実行すれば、債務が膨らむ可能性がある。

国内では人種、性別、教育、生殖に関する権利などの問題で、民主党と共和党の間でさらに溝が深まる可能性がある。

同氏は国内に不法滞在する移民を対象とした大規模な強制送還を行うことも表明している。

エモリー大学のアラン・アブラモウィッツ教授(政治学)は、トランプ氏の選挙不正に関する虚偽の主張、反移民的な発言、政敵を悪人扱いする手法を踏まえると、同氏の勝利は米国社会の亀裂を深めるだろうと述べた。

[ロイター]


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