ついに投票日を迎えたアメリカ大統領選挙。歴史的大接戦とも言われる戦いの行方はどうなるのでしょうか。(6日午後4時過ぎの放送より)
米大統領選 “激戦州” 行方は? 歴史的な大接戦
良原安美キャスター:
アメリカ大統領選挙は選挙人をどれだけ奪えるかという“争奪戦”です。合わせて538人いる選挙人に、各州と首都ワシントンの人口に応じて人数が振り分けられています。
例えば、カリフォルニア州には選挙人が54人います。州ごとに行われている有権者による一般投票で、勝った候補がその州の選挙人を“総取り”することになります。つまりカリフォルニア州で勝利すると、54人獲得することができるのです。
このアメリカ大統領選挙で重要なのは、激戦州での結果です。すでにノースカロライナ州などではトランプ氏が勝利確実となっています。
【勝敗を分ける激戦州の「選挙人 93人」 】
・ネバダ 6人
・ウィスコンシン 10人
・ミシガン 15人
・ペンシルベニア 19人
・ノースカロライナ 16人
・アリゾナ 11人
・ジョージア 16
過去のアメリカ大統領選挙においても、激戦州の結果が勝敗を分けているようです。
【過去の選挙 激戦7州は?】
‹2020年 バイデン氏 ›アリゾナ・ジョージア・ミシガン・ペンシルベニア・ウィスコンシンの計6州
‹2016年 トランプ氏›アリゾナ・ジョージア・ミシガン・ノースカロライナ・ペンシルベニア・ウィスコンシンの計6州
‹2012年 オバマ氏 › ミシガン・ネバダ・ペンシルベニア・ウィスコンシンの計4州
ホラン千秋キャスター:
激戦州以外はどちらの党になるか、伝統的に決まっているのでしょうか。
上智大学 前嶋和弘 教授:
そうですね。激戦州は微妙に変わってきたり、数も減ってきたりしているのですが、基本的にこの7州が、特にここ数回の選挙ではポイントになっています。
意見が分かれる “コロナとウクライナ戦争によるインフレ”
井上貴博キャスター:
アメリカも日本も「今日の生活、明日の生活を何とかしてほしい」という声が考えている以上に大きいなと思います。日本も“手取りを増やす”ことを掲げた国民民主党が躍進しました。世界各国、とにかく給料を増やしてくれるのは誰なんだということなんです。そこでトランプ氏は、政治家よりも経営者だから(何とかしてくれる)という思いがあったのではないでしょうか。
上智大学 前嶋和弘 教授:
共和党支持者、あるいは無党派の中の共和党寄りの人たちはそうでしょう。「まず経済」というのが大きいと思います。
一方で民主党支持者はそうではなく、減税や規制緩和によって自分の所得が伸びるのではないかと思っている人たちが結構いると思います。
ホランキャスター:
日本はインフレで物価が上昇しているにも関わらず賃金の上昇が追いついていません。アメリカも同じような状況なのでしょうか。
上智大学 前嶋和弘 教授:
賃金の上昇は結構あります。しかしそれがインフレに再び加担してしまうのです。ただインフレはコロナとウクライナ戦争によるものが大きい。そうするとバイデン氏のせいなのかどうかというところが、共和党支持者と民主党支持者で大きく分かれる部分です。
ニューヨーク・タイムズ「トランプ氏 勝利の可能性 “90%” 」
井上キャスター:
アメリカのニューヨーク・タイムズは「大統領選挙ライブ予測」として勝者の予測をインターネット上で報じています。この中で日本時間6日午後1時半ごろ、“共和党トランプ氏の勝利の確率が90%に高まった”と報じました。
確率の数字は開票の集計結果をふまえて、リアルタイムで変化していくのですが、激戦州7州のうちの一つ、ノースカロライナ州において、トランプ氏の勝利が確実となったことが影響しているとみられています。
上智大学 前嶋和弘 教授:
トランプ氏勝利の確率“90%”という数字が、おそらく出口調査から出たものですので議論はしにくいですね。
トランプ氏としてはノースカロライナ、ジョージア、ペンシルバニアの3州で勝つことが勝利の方程式なんです。むしろノースカロライナ、ジョージアで負けた場合、ハリス氏勝利の可能性が出て大激震だったでしょう。
トランプ氏は順当に勝っていますが、まだサプライズが出ていません。あえて言うと出口調査の結果、ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルバニアはハリス氏に否定的だったことがサプライズでしたね。
トランプ氏が勝利宣言 「政治的な勝利」
井上キャスター:
トランプ氏が勝利宣言をしました。いかがでしょうか。
上智大学 前嶋和弘 教授:
そもそもトランプ氏勝利の可能性が高かった。まだ勝利と決まってはいませんが、あえて言うならば“競り勝った”のだと思います。
今回はアメリカではなく、共和党、民主党双方の支持者の争点がいろいろとありました。その中でも共和党支持者の争点の熱意が大きかった。
トランプさんはまず最初に「不法移民を追い出す」ことを掲げました。このメッセージは、不法移民がいないところにも強く届いたのです。共和党支持者にとって不法移民問題は、キラーメッセージ、これこそ重要だったのでしょう。
演説では経済について「減税と規制緩和で強くしていく」という話も出てくるでしょう。これは一部の民主党支持者も「どうかな?」と思っている部分です。アメリカ国民全体の大統領にどこまでなれるか。難しいところですね。
今回の選挙は、選挙人の数、あるいは一般投票数を見ても、トランプ氏は全体で勝ったわけではなく辛勝です。辛勝の中のベストなところをとった感じに見えます。
========
<プロフィール>
前嶋和弘さん
上智大学教授 専門は現代アメリカ政治
中でも「メディア」「選挙」「連邦議会」の関係を研究
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。