米大統領選で対決する民主党のハリス副大統領(右)と共和党のトランプ前大統領=AP

 米大統領選は5日夜(日本時間6日午前)に開票が始まる。米メディアでは民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領による「史上まれにみる大接戦」とされており、すぐに当落が判明する可能性は低い。開票結果で注目すべき点はどこなのか。

 米大統領選では全米での総得票数は当落に関係がない。全米50州と首都ワシントンでそれぞれ「勝者」を決めて、各州に割り当てられた計538人の選挙人の獲得数を競う。48州と首都では勝者が選挙人を総取りする。中西部ネブラスカ、東部メーン両州は州全体の勝者が2人、連邦下院の選挙区ごとの勝者が各1人の選挙人を獲得する。

米大統領選を左右する激戦州の選挙人

 2016年大統領選のトランプ氏のように、全米の得票数では相手を下回りながら、選挙人獲得数で上回るケースもある。

 多くの州では民主、共和両党のどちらが強いかはっきりしており、ハリス氏が226人、トランプ氏が219人の選挙人を獲得するのは「既定路線」になっている。

 ただし、トランプ氏が優勢とされる中西部アイオワ州では、2日に発表された地元紙の世論調査でハリス氏が支持率で上回った。本番でも波乱が起きる可能性はゼロではなく、まずは優勢な州できっちりと勝てるかがポイントになる。

 そのうえで勝敗を分けるのは、激戦7州だ。一概に「激戦州」といっても固定化されているわけではなく、選挙ごとに激戦になる州は多少入れ替わる。

 早い段階で結果が出そうな州で注目度が高いのは、中西部ミシガン州(選挙人15人)と南部ノースカロライナ州(同16人)だ。激戦7州の中で、最も重要な東部ペンシルベニア州(同19人)に次いで多い選挙人が割り当てられている。

 ミシガン州はデトロイトを中心に自動車産業が盛んで、民主党の支持基盤である労働組合が強い。近年の州単位の選挙でも民主党が優勢で、ハリス氏にとっては「落とせない州」となる。ここでトランプ氏が勝つようなら、返り咲きの可能性が一気に高まる。

 一方、トランプ氏が負けられないのは、ノースカロライナ州だ。激戦7州の中で唯一、前回の20年にトランプ氏が勝利した州で、共和党の地盤が強い。ただ、近年は先端産業が発展し、リベラルな地域から高学歴層の移住が進んでいる。

 さらに、同時に実施される知事選の共和党候補が不人気で、足を引っ張っている面もある。トランプ氏が最終盤で同州に集中的に入ったのも危機感の表れだとみられている。

英コンサルティング大手「ブランズウィック・グループ」シニアアドバイザーのミッチ・ベインウォル氏=同社提供

 米共和党全国委員会の元幹部で、英コンサルティング大手「ブランズウィック・グループ」シニアアドバイザーのミッチ・ベインウォル氏は「激戦州以外の州の結果や世論調査からも手がかりは得られる」とする。南部バージニア州や東部ニューハンプシャー州など民主党がやや優勢な州を挙げ、「こうした州でどれだけ得票差がつくかで両候補の勢いがうかがえる」。

 米メディアが行う出口調査もヒントになるという。トランプ氏による中南米系や黒人票の切り崩し、ハリス氏による女性票の取り込み、民主党が優勢な都市部と共和党が優勢な農村部の間にある「郊外部」の票差などが注目点で、激戦州の結果を占う材料になる。

 ベインウォル氏は、激戦州の中で伝統的に民主党が強いペンシルベニア、ミシガン、中西部ウィスコンシンの3州を挙げ、「トランプ氏が一つでも奪えば、勝算が大きくなる」と指摘した。【ワシントン秋山信一】

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