米大統領選の投開票(11月5日)が1週間後に迫る中、民主党のハリス副大統領は29日、首都ワシントンで大規模な集会を開いた。会場は、2021年1月の連邦議会襲撃事件の直前に、トランプ前大統領(共和党)が支持者に議会への行進を呼びかけたホワイトハウス近くの広場だ。ハリス氏はトランプ氏の「脅威」を改めて強調することで、最終盤での支持拡大につなげる姿勢を鮮明にしている。
激戦州で再度攻勢へ
ハリス氏の陣営は今回の集会を終盤の節目と位置づける。ここに来て支持の伸び悩みが指摘されるが、陣営によると約7万5000人が集まり、熱気に包まれた。この場を弾みに激戦州を回り、再度攻勢に出る構えだ。
「(米国が)自由に根ざした国になるのか、混乱と分断に支配される国になるのかという選択だ」。ハリス氏は演説の冒頭、トランプ氏との違いを強調してこう呼びかけた。さらに「我々はトランプが誰なのか知っている」と訴え、議会襲撃事件を引き合いに出して「報復に固執し、無制限の権力を狙う人物なのだ」と述べた。その上で、自身は反対派の意見にも耳を貸すとし、「党派や自分自身ではなく、常に国を優先する。全ての米国人にとっての大統領になる」と語りかけ、支持を訴えた。
ハリス氏は選挙戦の終盤で、トランプ氏の「脅威」を強調するほか、人工妊娠中絶の権利擁護▽中間層への支援の拡大▽支持が伸び悩んでいるとされる黒人やヒスパニック(中南米系)の男性向けの支援の実施――などをアピールしている。加えて、穏健派の共和党支持層の切り崩しや、郊外に住む有権者の取り込みにも注力している。
援軍としては、現在も人気が高いオバマ元大統領が激戦州を連日回って演説しているほか、その妻ミシェルさんも積極的に集会に参加する。大物歌手のブルース・スプリングスティーンさんや人気歌手ビヨンセさんら著名人も相次いで集会に登場し、「総力戦」で支持拡大を図っている。
バイデン氏とは距離
一方で、バイデン大統領とは距離を置く。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区で続ける戦闘や米国内のインフレ(物価高騰)などを巡る現政権への批判を回避し、「刷新感」を演出する思惑があるとみられる。
ただ、29日の集会中も、会場近くでは親パレスチナの市民らが抗議活動を行った。従来、民主党の支持基盤だったイスラム教徒の離反は、ハリス氏にとって不安材料となっている。【ワシントン松井聡】
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