来週に迫ったアメリカ大統領選挙のシリーズ「激戦州の現場から」です。南部ジョージア州では、州の法律により高齢者やマイノリティなど一部の有権者が投票する権利を事実上、制限されてしまう事態となっています。

前回2020年の大統領選挙。ジョージア州で1万1779票の僅差で敗れたトランプ氏の選挙直後のある発言が問題を引き起こしました。

トランプ大統領(当時)[ ワシントン・ポスト紙公表の音声・2021年1月2日の電話 ]
「我々はジョージア州で勝っているはずで、(得票差の1万1779票よりも)1票多い1万1780票を見つけたいだけだ」

ジョージア州の幹部に電話して、選挙の敗北を覆すよう要求したのです。

共和党員ですが、トランプ氏の主張は受け入れられなかったというダンカン氏。当時、州の副知事で、トランプ氏から圧力を受けましたが、「不正はなかった」と断言します。

ジョージア州 ダンカン前副知事(共和党)
「彼も周囲も負けたことを知っています」

結局、トランプ氏の要求は受け入れられませんでした。しかし、共和党はその後、州の選挙制度を変更。

ジョージア州 ダンカン前副知事(共和党)
「トランプ氏の嘘や陰謀論が次々と明らかになりましたが、ジョージア州議会の共和党議員は、本当にひどい法案を準備したんです」

2021年に成立した州の法律について、ダンカン氏は「共和党がトランプ氏に都合のよいものにした」と批判しています。この法律では、投票しやすくするために作ったはずのバスの移動型投票所や期日前投票の屋外投票箱を取りやめたほか、郵便投票を申し込む際に免許証などでの確認を義務付けています。

民主党支持者が多いマイノリティの中には、免許証や車を持てない人も少なくありません。この法律にはこうした人たちを投票から遠ざける狙いがあると指摘されています。

投票所ボランティア ジェーン・ルーサーさん
「大きな困難に感じる人もいます。徒歩など、さまざまな移動手段の人や高齢者もいますから」

こう話すのは、民主党支持者のルーサーさん夫妻。法律の施行後に行われた2年前の中間選挙の際、遠くの投票所に行くことができない有権者を車で送り、投票を手伝ったといいます。

投票所ボランティア ジェーン・ルーサーさん
「彼らは喜んでいましたよ。そうした有権者は60代や70代で公民権運動の闘いを知っている世代です。投票するために命をかけるのを見てきましたからね」

投票の機会が制限される中、地元NGOのヤングさんは、1票を投じることの大切さを学生たちに伝えています。ヤングさんは「酷い法律には投票することで対抗すべきだ」と訴えます。

アメリカ自由人権協会 ヤングさん
「若者や貧困層、有色人種などが投票しにくくなるルールが作られました。多くの国、例えばドイツでは投票権を失うことはありえません。日本も同じでしょう。でもアメリカでは誰が投票出来るかが、問題になっているんです」

選挙権の勉強会に参加した学生
「政治信条に関係なく、自分の権利を知ることが大事です。私たちアメリカ人にとって欠かせない権利ですから」

ジョージア州の期日前投票は300万票を超えました。有権者の思いがこもった一票一票がアメリカの未来を作ります。

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