イスラエルの議会は28日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の国内での活動を禁止する法案を可決した。日本や英国、フランスなど7カ国は、UNRWAがパレスチナ難民に不可欠な人道支援を提供しているとして、この法案に対して「深刻な懸念を表明する」との共同声明を発表していた。新法の成立で、国際社会からの非難はいっそう強まりそうだ。
イスラエルメディアによると、新法は、占領地のパレスチナ自治区ガザ地区やヨルダン川西岸地区、東エルサレムとイスラエル国内でUNRWAの活動を禁じる内容。イスラエル政府関係者がUNRWAと接触することも禁止した。
UNRWAのラザリーニ事務局長はX(ツイッター)で「65万人の少年少女から教育を奪い、あらゆる世代の子供たちを危険にさらす。この法案を押し返せなかったことは、第二次大戦以降の多国間メカニズムを弱体化させる」と批判した。
UNRWAはイスラエル建国を受けて始まった第1次中東戦争(1948~49年)で故郷を追われたパレスチナ難民を支援するために設立され、50年から活動を続けている。難民キャンプのインフラ整備や学校建設などのほか、昨年10月に始まったガザ地区の戦闘では住民に対する人道支援も行っている。この支援活動が停止すれば、ガザの人道状況の更なる悪化は必至だ。
一方、イスラエル側は、ガザのイスラム組織ハマスによる昨年の越境攻撃にUNRWAの職員の一部が関与したと主張してきた。ガザでUNRWAが運営する多くの学校を空爆で破壊したほか、UNRWAの事務所でも軍事作戦を実施した。これまでにUNRWAのスタッフ200人以上が死亡している。
ガザの人道状況の悪化には米国も懸念を強め、ブリンケン米国務長官らがイスラエルに対して支援を増やすよう求める書簡を送っている。イスラエル首相府は28日、「イスラエルの治安を害さない形でガザの人道支援を促進するため、国際的なパートナーと協力する用意がある」とXに投稿したが、方法などは明らかにしなかった。【カイロ金子淳】
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