来年1月に同性婚が法制化されるタイで、最近よく耳にする言葉がある。「レインボー経済」――。性的少数者(LGBTQなど)に寛容なサービスによって生まれる経済効果のことを指すが、当事者の間では賛否を呼んでいる。
「LGBTQ+ツーリズムは高い可能性を秘めている」。タイ観光庁のアピチャイ副総裁は地元メディアの取材にそう述べ、消費額が大きいとされる性的少数者を歓迎するホテルやツアーなどの旅行サービスを広げる必要があるとした。
コンサルティング会社「アウトナウ」は、世界のLGBTQツーリズムの市場規模が2030年には5685億ドル(約85兆円)に達すると予想する。旅行先となる国を選ぶ際は、性的少数者に寛容かどうかが決め手になるという。
タイは10年ほど前から「Go Thai. Be Free.(タイに行き、自由になろう)」というキャッチコピーで、性的少数者を対象とした観光キャンペーンに力を入れてきた。
地元メディア「ネーション」によると、近年はとりわけ中国から訪れる性的少数者の旅行客が増えており、「同性婚の法制化はさらなるアピールポイントになる」としている。
レインボー経済の恩恵を受けるのは、旅行業界にとどまらない。米国のブライダル業界は同性婚が認められた15年から5年間で、同性カップルによる結婚式などで約38億ドル(約5730億円)の収益を得たという試算がある。
タイでもブライダル業界に加え、法的な結婚で同性パートナーが生命保険の受取人となることが可能となる保険会社も経済効果に期待する。
ソーシャルメディアでは、こうした動きに「性的少数者への理解が広がる」と歓迎の声が上がる一方、当事者団体は疑問を投げかける。
プライドパレードなどを主催してきた「バンコクプライド」の創設者アン・チュマポーン氏は、今でも差別や偏見に苦しんでいる性的少数者は多いとし、「タイが本当に性的少数者に優しい国になってからマーケティング戦略として使うべきだ」と話した。【バンコク石山絵歩】
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