表札を隠す深圳日本人学校=中国広東省深圳市で2024年9月19日、岡崎英遠撮影

 中国南部・広東省深圳市で深圳日本人学校の男子児童(10)が徒歩で登校中に刺殺された事件は18日で発生から1カ月を迎えた。中国当局は犯行の動機や経緯など詳細な情報をいまだ明らかにしていない。真相の見えない不安を抱えたまま、深圳日本人学校では手探りで安全対策を講じている。

 事件は9月18日朝、学校から約200メートルの場所で発生し、その場で容疑者の中国人男性が取り押さえられた。日本人を狙ったのか、社会への不満からなのか、動機は不明のままだ。6月にも江蘇省蘇州市で日本人母子らが切りつけられた事件が発生したが、やはり詳細は明かされていない。

 17日には日本外務省の岩本桂一領事局長が北京市で中国外務省幹部と協議し、在留邦人の安全確保や悪質な反日言論への対応を改めて求めた。中国側からは新たな情報提供はなく「中国の司法制度に従って、適切な段階で説明する」との立場が表明されたという。

 一方、約260人が通学する深圳日本人学校は事件後、オンライン授業を経て14日に通学を再開。安全対策として、児童・生徒の半数以上を占める徒歩通学の解消に取り組んだ。

 スクールバスの路線を増やし、配車アプリを利用した車での送迎も可能にした。スクールバスの車内に加え、バス停にも警備員を配置。ただ、こうした措置を恒常的なものにするには予算の確保などの課題が残っているという。

 学校は心理面のケアにも取り組み、通学に不安を感じたり、一時帰国したりした子どもがいることを踏まえ、オンラインでも授業に参加できるようにしている。また、日本人と判別されやすいランドセルを使用しないように各家庭に呼び掛けた。【北京・河津啓介】

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