米国防総省のシン副報道官は15日の記者会見で、イスラエルの防空態勢を支援するため、米軍の終末高高度防衛(THAAD=サード)ミサイル部隊の先遣チームが14日にイスラエル入りしたと明らかにした。数日中に残る部隊も到着する見通しという。
イランやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによる攻撃を念頭に、弾道ミサイルへの対処を支援する。イスラエルに地上部隊を常駐させることで、米軍が攻撃を受けるリスクは増す。
国防総省によると、THAAD運用のために計約100人が現地に駐留する。これまでも米軍の顧問役などがイスラエル国内にいたが、地上配備の防空部隊の駐留は、昨年10月にイスラエルを巡る緊張が激化して以降では初とみられる。
イランは今年4月のイスラエルへの直接攻撃では巡航ミサイルや無人航空機(ドローン)を多用していた。だが、10月1日の攻撃では弾道ミサイルを使用。相手の迎撃ミサイルが対応できないように多数のミサイルを集中的に発射する「飽和攻撃」を実行し、イスラエルの軍事施設に被害が出た。
THAADは高高度で弾道ミサイルを迎撃する能力がある。米軍部隊の派遣には、イスラエルの防空能力に厚みを持たせる狙いがある。
一方、イスラエルはイランの攻撃に対する報復攻撃の計画も進めている。
米紙ワシントン・ポストによると、イスラエルは11月5日の米大統領選の前に、イランの軍事施設を標的に報復を実行する見通しだ。イスラエル首相府は声明で「我々は米国の意見を聞くが、最終判断は国益に基づいて下す」としている。
イランは10月1日、いずれも親イラン組織であるレバノンのヒズボラやパレスチナ自治区ガザ地区のハマスの指導者らが殺害されたことへの報復として、イスラエルを約180発の弾道ミサイルで攻撃した。
米政府には、イスラエルが報復として、イランの核やエネルギーの関連施設を攻撃すれば、戦闘がさらに激化するとの懸念がある。【ワシントン秋山信一】
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