中国が14日に台湾周辺の海空域で行った軍事演習に対し、台湾の頼清徳政権は「平和で安定した地域の現状を破壊することをやめるべきだ」(総統府)と批判しつつ、十分な備えをしていると強調し、台湾社会に動揺はほぼ見られなかった。専門家は威嚇を目的とした過去の演習に比べ、実戦能力を確認する狙いが大きいと見ている。
台湾国防部(国防省に相当)は午後4時時点で、台湾周辺の空域で戦闘機やヘリコプター、無人機など、1日としては過去最多となる延べ125機の活動を確認。このうち延べ90機が台湾海峡の中間線を越えて台湾側に侵入した。海上では空母・遼寧率いる艦隊(4隻)を含む軍艦17隻と海警局の公船17隻が確認された。海警局公船のうち5隻は馬祖島など中国福建省に近い離島周辺で活動した。
頼総統は14日午前、国家安全会議の幹部会議を開いて対応を協議した。フリゲート艦を緊急出港させたほか、対艦ミサイル部隊を展開した。また海巡署(海上保安庁に相当)は馬祖島周辺で台湾が設定した「制限水域」に侵入した海警船4隻に対し、直ちに水域から出るよう求めたという。
中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を行うのは2022年8月のペロシ米下院議長(当時)の訪台以降、約2年で4回目となる。24年5月に頼氏が総統に就任した際の演習が「聯合利剣2024A」と名付けられたため、年内に再度の実施が確実視されていた。冬の台湾海峡は波が高いため演習が難しく、10月10日の双十節(「中華民国」の「建国」記念日)後が「最後のタイミング」(台湾安全保障関係者)だったといえる。「頼氏の演説内容にかかわらず、演習をやっただろう」
台湾の馬振坤(ばしんこん)・国防大学教授は14日に台北市内であったフォーラムに登壇し、今回は22年の演習で使用されたようなミサイルや実弾が確認されていないと指摘。「心理的な威嚇のために砲火を見せるのではなく、実戦能力の検証に重点を置いたもの」と分析し、「比較的静かな演習だが、台湾にとってはより脅威となる内容だ」と述べた。【台北・林哲平】
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