台湾の蔡英文前総統=台北で2024年3月、AP

 台湾の蔡英文前総統は12日深夜、訪問先の欧州へ出発した。5月の総統退任後、外国訪問は初めて。台湾メディアによると、ブリュッセルの欧州連合(EU)本部などを訪れる。台湾には、中国の圧力で公式な外交の機会が限られる中、国際的に知名度がある蔡氏の活動によって欧州との関係を強化する狙いがある。

 蔡氏の欧州訪問は8日間で、チェコでの民主主義に関するフォーラムで講演する。蔡氏は12日、自身のフェイスブックに「台湾の人々が民主主義や自由の信念を守っていることを伝え、台湾と欧州の関係を深化させ続ける」と投稿した。

 頼清徳総統は6日に総統府で蔡氏と面会し、「民主主義国から信頼を寄せられている蔡氏が海外を訪問し、台湾のために発言するのは良いことだ」と期待感を示した。

 一方、台湾を自国の一部と見なす中国は反発している。台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は9日、「『台湾独立』勢力に誤ったシグナルを送らないよう関係国に求める」との声明を発表した。

 欧州では、台湾と正式な外交関係を持つ国はバチカン市国しかない。ただ、中国の台湾統一に向けた圧力の高まりや国際的な影響力拡大への警戒感などから、近年は台湾と高いレベルでの交流が活発化している。

 EUの欧州議会は2021年に初めて公式代表団を台湾に派遣。23年にはドイツの教育・研究相が閣僚として26年ぶりに訪台した。

 ただ、英紙ガーディアン(電子版)によると、英国議会では、台湾との友好を重視する超党派議員グループが蔡氏を招く計画を進めていたが、英外務省の要請により延期した。ラミー外相が近く訪中する予定で、中国側の反発を避けるためだという。【台北・林哲平】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。