米紙ニューヨーク・タイムズは12日、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスが2023年10月に行ったイスラエルへの越境攻撃について、当初は22年秋の実施を計画していたと報じた。反イスラエルで共闘するイランや、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラに協力を求める中で、実施が先延ばしになったとしている。
イランは直接の関与否定
ただ、イランは越境攻撃への直接の関与を否定し、米国も「関与した証拠はない」としている。
報道によると、イスラエル軍は今年1月下旬、ガザ南部ハンユニスのハマス軍事部門の地下司令部にあったパソコンを押収した。中には計10回に上るハマスの会議の議事録があったという。ニューヨーク・タイムズはこれらを入手し、ハマスのメンバーや専門家らの情報を基に分析した。
議事録によると、越境攻撃のコードネームは「ビッグプロジェクト」で、目標としてイスラエルとサウジアラビアの国交正常化交渉の妨害を挙げていた。ハマスは、イスラエルとの大規模な衝突を望んでいないように見せかけるため、21年5月以降は衝突を意図的に避けた。
ハマスの計画では、22年秋に越境攻撃を実施する予定だったが、ヒズボラとイランに攻撃に加わるように説得する中、計画を遅らせたという。
23年8月の議事録によると、現ハマス最高指導者のシンワル氏の側近が、レバノンに駐在するイラン革命防衛隊司令官と攻撃計画について議論した。イラン側は計画を歓迎したものの、「環境を整える」時間が必要だと返答したという。
また、ヒズボラの最高指導者だったナスララ師にも計画を伝える予定だったが、会談は延期された。ナスララ師に直接、情報が伝わったかも不明だ。
ハマスは越境攻撃で約1200人のイスラエル人らを殺害した。この際、ヒズボラはロケット弾によるイスラエルへの攻撃を国境付近にとどめ、イランもハマスの攻撃を直接的には支援しなかった。
イランの国連代表部は、ニューヨーク・タイムズの取材に「全ての計画はハマスの軍事部門によって実行された。イランとヒズボラをこれに関連づけようとする主張は全て捏造(ねつぞう)されたものだ」と主張した。【エルサレム松岡大地】
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