10月7日、中東ガザにイスラエルが侵攻して、1年となりました。今なお、多くの犠牲者を出しながら、戦闘は一向にやむ気配がありません。その根本には、何があるのでしょうか。
追悼イベントで戦闘継続の姿勢を強調
7日、イスラエルで、イスラム組織ハマスによる奇襲攻撃から1年の追悼イベントが開かれ、ネタニヤフ首相は改めて、戦闘継続の姿勢を強調しました。
ネタニヤフ首相(ビデオメッセージ)
「我々の存在と平和を脅かしている限り、戦い続ける」
1年前の10月7日から続くガザでの戦闘は、いまだ停戦には至らず、イスラエル軍は、24年10月10日も避難民が集まる学校を空爆。28人が死亡したといいます。
ガザに住む女性
「私たちが何をしたの?殺された子どもたちは、イスラエル人に何をしたの?」
この1年でガザでの死者は、4万1800人以上にのぼり、そのうち子どもの犠牲が、1万1000人を超えるとされます。
イスラエル国内でも、停戦を求める政府への抗議行動が行われています。
「彼は“復讐”という言葉を放ちました」 兵士の間からも疑問の声
9月には、人質救出のための停戦を訴える、50万人が参加するデモも行われました。こうした声にもかかわらず、ネタニヤフ政権はガザへの攻撃を続けています。
疑問の声は、兵士の間からも上がっています。
元イスラエル兵 ユバルさん(27)
「私たちは爆撃で(ガザに住む)4万人を殺したのです」
医学生のユバルさんは、2023年12月から2か月間、ガザ南部で衛生兵として従軍しました。ところが…
元イスラエル兵 ユバルさん(27)
「私の指揮官は拠点にしていた民家を焼き払うよう命じました。指揮官は当初、正当化しようとしたが、説明は不十分で馬鹿げたものでした。その後、彼は“復讐”という言葉を放ちました」
指揮官の命令に納得できなかったユバルさんは現在、ガザ侵攻に反対する署名を募り、130人の兵士が賛同したといいます。
ユバルさんは、「イスラエルは戦争を終わらせるつもりがない」と批判したうえで…
元イスラエル兵 ユバルさん(27)
「唯一の解決策は、少なくとも現時点ではイスラエルの隣に“正しく機能する”パレスチナ国家を持つこと」
ユバルさんはハマスの奇襲を厳しく非難する一方で、主権を持ち、独立したパレスチナ国家の必要性を訴えたのです。
ガザ地区とヨルダン川西岸地区に分断されたパレスチナは、イスラエルの占領下にあります。
93年には、国家の樹立を目指す「オスロ合意」が結ばれましたが、その後もイスラエルは占領をやめず、国際法違反とされる入植も続けています。
家族を失うも、あえて「憎まない」 ガザ出身医師
また、イスラエルは、2023年10月以前にも、ガザにたびたび侵攻を行ってきました。そうした侵攻で家族を失いながら、あえて「憎まない」と訴える人がいます。
ガザ出身医師 アブラエーシュ博士
「憎しみや暴力を持って生まれた人は誰もいません」
10月4日、都内の大学でガザの難民キャンプ出身の医師を描いたドキュメンタリー映画「私は憎まない」の試写会が開かれました。
ガザからイスラエルの病院に通い、産婦人科医としてイスラエル人、パレスチナ人双方の赤ちゃんの誕生に携わるアブラエーシュ医師は、医師として、パレスチナとイスラエルの架け橋になろうと努力します。しかし、2009年、ガザの自宅がイスラエル軍の砲撃にあい、3人の娘が犠牲に。
それでもなお、医師は、パレスチナとイスラエルの平和的共存を訴えます。
ガザ出身医師 アブラエーシュ博士
「復讐は復讐を生む。だから私たちはそれを止め、この復讐の原因を防ぎ、前進しなくてはなりません」
そして今も続くイスラエルの占領と入植に、根本的な原因があるとして、体を蝕む癌に例えて非難します。
ガザ出身医師 アブラエーシュ博士
「誰が癌や病気と共存できるでしょうか?共存はできません。両者は平等ではないのです。私たちは、平等、権利、尊厳、正義、自由、独立に基づいた共存を必要としています」
しかし、侵攻が本格化してこの1年の間に、医師は、ガザにいる50人以上の親族を失ったといいます。
平和の兆しが一向に見えないガザ。医師は映画でこう語っています。
「憎しみを防ぐには、憎むきっかけを知ることだ」
(「サンデーモーニング」2024年10月13日放送より)
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