被災地サウスカロライナ州を訪れて地元市長と抱擁するバイデン(10月2日) EVELYN HOCKSTEINーREUTERS

<移民支援に6億ドル以上が投入されている一方で、被災地への資金が不足している現状に共和党が強く反発している>

米南部と東部を襲った超大型ハリケーン「へリーン」による被害が拡大している。10月3日の時点で死者の数は200人を突破した。

そうしたなかでマヨルカス国土安全保障長官がショッキングな発言をした。自然災害などの大災害への対応を担う政府機関である連邦緊急事態管理庁(FEMA)が資金不足に陥りかねない、というのだ(FEMAは国土安全保障省の一部局)。


マヨルカスは2日、「当座の被災地のニーズを賄うだけの資金はある」としつつも、今シーズンにもう1つ巨大ハリケーンが襲来すれば資金面で乗り切れないと述べた。

この資金不足に関連して共和党がやり玉に挙げるのは、FEMAが少なくとも6億4000万ドルの資金を、移民の流入への対応を迫られている地域を支援するために拠出していることだ。

「問題を解決するのは簡単だ」と、テキサス州のアボット知事(共和党)はX(旧ツイッター)に投稿した。「マヨルカスとFEMAは、不法移民を定住させるために金を使うのを直ちにやめて、その金をハリケーンの被災地に振り向けよ。アメリカ人を最優先にすべきだ」

6億4000万ドルの資金拠出は、「シェルター・アンド・サービシズ・プログラム(SSP)」と呼ばれる取り組みに基づくものだ。FEMAのウェブサイトによると、このプログラムは、「非米国市民の移民を短期収容施設から安全に、整然と、人道的に退去させること」を目的としている。その資金は、食料、住居、輸送、緊急の医療、衣料品、通訳・翻訳など、さまざまな用途で用いることができる。

しかし、SSPの予算は、FEMAの年間予算に比べるとわずかな金額だ。2025会計年度(10月1日~)にFEMAが計上した予算は331億ドルに上る。しかも、SSPは税関・国境取締局(CBP)から受け取った予算をFEMAが分配しているにすぎず、同プログラムの予算は災害被災地の支援予算とははっきりと区別されている。

「(共和党などの)批判は全く事実無根だ」と、国土安全保障省の広報担当者は3日、本誌に語っている。「SSPは(被災地支援とは)全く別個のプログラムとして議会の承認を得て実施している。FEMAの災害関連の機能や予算とは関係ない」

問題は、「へリーン」が襲来したのがちょうど会計年度の境目の時期だったこと。新しい年度の予算は、いま議会で審議されている最中だ。

FEMAの災害救援基金は、この大型ハリケーンが甚大な被害をもたらす前の時点で既に、20億ドル不足していた(SSPの6億4000万ドルとは比較にならない金額だ)。

議会は9月25日、予算切れによる連邦政府機関の一部閉鎖を回避するためのつなぎ予算案を可決したが、FEMAの災害救援基金への追加拠出は盛り込まれていない。


このつなぎ予算案では、FEMAが活用できる資金として200億ドルが承認されたが、これは「へリーン」による被災地だけに支出できる金額ではない。今年これまでに発生した洪水や山火事の被災地全ての支援をこの予算で賄わなくてならないのだ。

バイデン大統領は3日、「へリーン」の被害がとりわけ甚大だった州の復旧および被災者支援の費用を連邦政府が全て負担すると発表した。被災地には、ハリケーンで生活を破壊された人たちが大勢いる。

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