住宅地に侵入するクロクマ、住民と野生動物の新たな衝突(写真はイメージです) Geoff Brooks-Unsplash
<シエラマドレの住宅街にクロクマの侵入が相次いでいる。2020年の目撃件数は100件だったが、2023年には380件に達し、住民の生活に深刻な影響を与え始めている>
カリフォルニア州のエンジェルス国有林(約2800平方キロメートル)に隣接するシエラマドレの市街地で、生息地を人に侵害されて人家や車や庭などに侵入するクロクマが増えている。
【動画】クマの住宅侵入が急増...市街地で懸念広がる
侵入者に遭遇したという住民からの通報は日常茶飯事になった。クマたちは餌を求めて住宅に押し入り、時には単純にドアを開けて入り込む。最近ではアルタビスタドライブに面した廃屋にすみついて、当局に追い出されたクマがニュースになった。
同地でクマを目撃することは珍しくない。しかしこうした新しい現象に対しては懸念が強まっている。2020年は100件程度だったシエラマドレのクマ目撃件数は、2023年までには380件に激増し、侵入の通報は少なくとも50件に上った。
自宅に侵入されたことがあるという住民のサラ・オールデンは、クマについて「この5年で本当に厄介者になった。どんどん図々しくなっている」とCBSロサンゼルスに語った。
オールデンの家に侵入したクマは、ごみをまき散らしていったという。
カリフォルニア州魚類野生生物局でサウスコースト地区を管轄するエリン・ウィルソンは5月にシエラマドレ市議会で、簡単に追い払うことができるクマもいれば、危険なクマもいると証言した。中には人間の予定を覚えてごみ収集日に住宅地をうろついたり、人を怖がらなくなって器物を損壊したり家畜を殺したりするクマもいるという。
本誌はクマの侵入について魚類野生生物局に電話でコメントを求めている。
アルタビスタドライブの廃屋にいたクマは、特に大きなトラブルを巻き起こした。サンゲイブリエル渓谷を見晴らすこの家は、空き家だったことからクマがすみつき、悪臭がひどいという近隣住民からの苦情を受けて市が対応に乗り出した。
家の持ち主とは連絡が取れなかったため、市は物件調査のための令状を取得。8月に魚類野生生物局が実施した調査で、割れた窓ガラスやクマの足跡、糞、腐った食べ物など、クマの侵入を裏付ける明らかな証拠が見つかった。
市はこの家に板を張って敷地を清掃した。以来、クマは姿を見せていない。
魚類野生生物局は、クマと住民の衝突を減らすため、夜間はペットを屋内に入れること、床下の空洞などクマの巣穴になりそうな場所に近付けないようにすること、動きに反応する照明を設置すること、クマが開けられないごみ箱を使うことなどを勧告している。木から落ちた果実も拾うよう促した。
同局によると、カリフォルニア州内には推定5万頭~8万1000頭のクロクマが生息する。個体数は増えており、人間の居住地に合わせて順応することをすぐに覚える。
「クロクマに人の食べ物やごみを食べさせれば、たちまち常習になる。警戒心も関心もなくして器物損壊を引き起こす。人の安全を脅かすかもしれない。クマが殺される可能性もある」。魚類野生生物局はウェブサイトでそう警告している。
(翻訳:鈴木聖子)
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