中国宁夏回族自治区の大規模酪農牧場。乳牛一頭ごとに小屋が分かれている(8月12日) Photo by Yuan Hongyan/VCG
<国や地方の子育て支援にもかかわらず出生数は減る一方。加えてコロナ後の景気停滞で消費者は「非必需品」の牛乳は買わなくなっている>
出生率の低下と経済減速のなか、中国の酪農業/乳製品業界は、牛乳の供給過剰に苦しんでいる。
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中国における乳製品消費量は、歴史的に欧米諸国に比べて低水準だったが、都市化の進行、所得の増加、そして政府が栄養価の高い食品として乳製品の消費を推進したことを背景に、ここ数十年で増加していた。しかしここへきて、消費量は減少に転じている。
シンガポールのザ・ストレーツ・タイムズ紙によると、中国の生乳生産量は、2017年の3039万トンから、2023年には4200万トン近くへと急激に増加した。しかし、国内消費量はそれに追いついていない。
経済状況の悪化により、消費者は、乳製品などの非必需品への支出を控えるようになっている。2021年の1人当たり牛乳消費量は14.4キロだったが、2022年には12.4キロに減少した。
中国国家統計局が2022年に最後に公表したデータによれば、中国が2022年末に厳格な新型コロナウイルス規制を撤廃して以降、中国の消費は概ね低迷している。
金融サービス企業ストーンXのアジア乳業部門責任者を務めるリー・イーファン氏はロイターに、「業界は、牛乳と牛肉の両方で損失を出している」と語っている。
牛乳の平均生産コストは1キロ当たり約3.8元だが、現在の価格はそれを大きく下回る。小規模農家の多くは、事業を閉鎖するか、食肉用に牛を売らざるをえなくなっている、とザ・ストレーツ・タイムズ紙は報じている。
中国の出生率は、世界でも最低水準にある。数十年にわたって続いた一人っ子政策は2016年に廃止し、以降は国や地方自治体がさまざまな子育て支援策を講じているにもかかわらず、人口1000人当たりの出生数は、2017年には12.43人、2023年には6.39人と減少を続け、過去最低を記録した。
乳児用粉ミルクの需要も大幅な減少だ。
メラミン混入事件が輸出の妨げに
業界誌デイリー・ビジネス・アフリカによると、中国で乳児用粉ミルクを販売するニュージーランド企業「a2ミルクカンパニー」は、2024年6月に終了する会計年度において、中国の粉ミルク市場は、販売量が8.6%減、販売額が10.7%減を記録したと報告している。
牛乳メーカーは余った生乳を粉乳に加工しているが、6月時点では生乳換算で30万トン超の余剰が生じている。これは前年の2倍の量だと、ザ・ストレーツ・タイムズ紙は、中国乳業協会のコメントを引用するかたちで伝えている。
余剰分を輸出しようにも、高いコストと、2008年に起きた中国製粉ミルクの異物混入スキャンダルによる根強い不信感が壁になっている。2008年の事件では、タンパク質含有量を水増しするために、有毒化学物質メラミンが乳児用粉ミルクに添加されたことが原因で、少なくとも6人の乳児が死亡、数千人が入院した。
(翻訳:ガリレオ)
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