「動物をスケープゴートに...」ナミビアの干ばつ対策にPETAが警鐘(写真はイメージです) Chris Christensen-Unsplash

<ナミビア政府が深刻な干ばつ対策の一環として、野生動物の殺処分計画を実施中。PETAをはじめとする動物保護団体は、計画の残虐性と効果の欠如を非難している>

過去数十年で最悪の干ばつに見舞われ、人間と野生動物の対立が激化するナミビアで、政府主導による野生動物の殺処分が始まり、物議を醸している。この殺処分によって、すでに150頭以上が殺され、さらにゾウ、シマウマ、カバを含む700頭以上が処分される予定だ。

ナミビアの環境・林業・観光省が8月26日に発表した殺処分計画は、広範な干ばつ救済政策の一環として、地元民に狩猟肉を提供することを目的としている。また、放牧圧を減らし、利用できる水の量を増やすことも目的だ。

しかしこの計画は、動物愛護団体から強い反対を受けている。「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA:People for the Ethical Treatment of Animals)」は、この殺処分計画は近視眼的で、効果がなく、残酷であると批判した。PETAのシニア・バイスプレジデントを務めるジェイソン・ベイカーは、ナミビア首相宛ての公開書簡の中で、この計画は、野生動物の個体数に壊滅的な打撃を与える可能性がある、と警告した。

「たとえ数頭でも(ゾウを)殺すと、群れ全体が壊滅的な打撃を受け、混乱が生じる可能性がある。生き残ったゾウの死亡率が上昇し、ストレスを感じたゾウが、人間と動物の対立を悪化させる危険性もある」とベイカーは書いた。

本誌は、ナミビアの環境・林業・観光省に対して、ウェブサイトを通じてコメントを求めた。

生態系への悪影響の懸念も

PETAはナミビア政府を、長期にわたる戦略的解決策を必要とする、より広範な問題のために、野生動物をスケープゴートにしていると批判する。PETAは、人獣共通感染症のリスクなど、殺処分がもたらすいくつかの意図せぬ結果についても懸念を表明した。

「新型コロナウイルス、SARS、HIV、エボラ出血熱、その他の人獣共通感染症は、野生動物を屠殺し食用にすることの危険性を世界に示した」とベイカーは述べた。

さらに、淘汰によって、壊れやすい生態系が崩れることも懸念されている。「どの種も、生態系において重要な役割を果たしているため、これらの動物の殺処分は、バランスを崩し、苦しみを悪化させる可能性がある」とベイカーは付け加えた。

トロフィーハンターの気配あり

ナミビアの干ばつは深刻な状況だ。過去100年で最悪の干ばつを受け、ナミビア大統領は2024年5月22日、非常事態宣言を出した。

食糧備蓄は危機的に少なく、人口の半数近くが飢餓に直面している。国連と米国政府は、他のパートナーとともに、特に栄養失調の子どもたちの救済に取り組んでいる。

しかしPETAは、こうした問題に対処しようとして殺処分を行うことの効果に疑問を呈している。「数百頭の動物の肉では、この災難に対処することはできない。また、人間や家畜の水源と、ナミビアの国立公園に生息する野生動物たちの水源は同じではない」とベイカーは言う。

PETAはまた、殺処分の背後に「不純な動機」がある可能性についても懸念を示している。トロフィーハンター(個人的な記念品を目的として野生動物を狩猟する人々)が、料金を支払って動物を殺すことが認められているのではないかというのだ。「利益が、この残酷な計画の原動力になっているかもしれない」とPETAはウェブサイトで示唆している。

ナミビア政府はまだ、こうした疑惑に反論していないが、環境・林業・観光省は、8月最終週の声明で殺処分計画を擁護した。「この取り組みは必要であり、ナミビア国民の利益のために天然資源を利用するという、憲法上の義務に沿ったものだ」と同省は述べた。

(翻訳:ガリレオ)

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