(写真はイメージです) Thomas Griggs-Shutterstock
<専門家は「詳しく調査すべき標本も多数あり、この数はさらに増えそうだ」と主張している>
新たに発見された50種以上の新種は、太平洋の海嶺に潜んでいた。
【動画】イースター島付近の海嶺で50種以上の新種生物を発見
そうした新種に加えて、それまでこの海域にはいないと思われていた100種あまりのカニ、サンゴ、ウニ、イカ、魚類、軟体動物、ヒトデ、ガラス海綿類、ヒゲナガチュウコシオリエビなども見つかった。
そうした種の1つ、ヤスリサンゴは、光合成で生きる生物の発見場所として世界最深の記録を更新した。
発見したのはシュミット海洋研究所の国際チーム。イースター島(現地語でラパ・ヌイ)と南米チリの間に連なる全長約2900キロの海底山脈サラス・イ・ゴメス海嶺を探査した。
この海嶺に棲む生物は地球上で最もユニークで多様性に富んでいる。固有種の割合が極めて高く、海底に生息する生物にとって欠かせない環境があり、回遊種(クジラ、ウミガメ、メカジキ、サメなど)の通り道があり、80種を超す絶滅危惧種がいる。今回、ここに160種以上が加わった。
「今回の探査の大きな成果として、一見して新種と思われる種を50~60種も発見した。詳しく調査すべき標本も多数あり、この数はさらに増えそうだ」。探査に参加したアリアドナ・メチョはそうコメントしている。同氏はバルセロナスーパーコンピューティングセンター-セントロナシオナルデスーパーコンピューター(BSC-CNS)気候変動性・変動(CVC)局の研究者。
「世界最深級の深場サンゴも発見され、ポリネシアに生息するこの生物の分布域が数百キロ拡大した。深い場所に生息する海綿やサンゴも見つかっており、脆弱なその生息地を保護する必要があると考える」(メチョ)
今回の探査は、米テキサス大学リオグランデバレー校のエリン・E・イーストンと、チリのカトリカデルノルテ大学のハビエル・セラネス率いる研究チームが2月24日から4月4日にかけて実施。サラス・イ・ゴメス海嶺を構成する110の海山の多くを調査して、面積7万7000平方キロ以上に及ぶ海底地図を作成した。その中には、これまで記録されていなかった海山6山も含まれる。
「この2回の探査で我々が明らかにした驚くべき生息地と動物の集団は、この最果ての海域に関して我々がほとんど何も知らない現実を見せつけている」とセラネスは述べ、「こうした探査は、この地域の生態学的重要性について意思決定者に認識してもらい、領海内、さらには領海を越えて保護戦略を強化してもらう役に立つだろう」と期待する。
今回の探査のわずか数カ月前、ナスカ海嶺とフアン・フェルナンデス海嶺で行われた別の探査でも、新種と思われる生物100種類以上が見つかっていた。この2回の探査は、こうした海域が生物多様性に富み、従って保護が必要なことを物語る。
テキサス大学のイーストンは言う。「個々の海山ごとに固有の生態系が観察されたことで、少数の海山だけでなく、海嶺全体を保護する重要性が浮き彫りになった。今回の探査で収集したデータが、サラス・イ・ゴメス海嶺の公海を含む新しい海洋保護区設定の役に立つことを期待する」
サラス・イ・ゴメス海嶺は国連公海条約の批准を受け、公海海洋保護区の候補地とされている。同条約には米国など多数の国が署名しているが、これまでに批准したのはチリとパラオのみ。60カ国が批准すれば、十分な科学的根拠があることを前提として、各国が公海上に海洋保護区を設定できるようになる。
ラパ・ヌイからは、ラパ・ヌイ海洋評議会のメンバー1人を含む4人が探査にかかった。同評議会はチリ遠隔地の領海とラパ・ヌイ周辺の海洋保護区の共同管理を担い、もしサラス・イ・ゴメス公海海洋保護区が設定されれば管理に協力する。
「ラパ・ヌイが海洋科学探検に参加する重要性は、島を取り巻く海洋環境を知り、理解を深める機会を得ることにある。天然資源、未知の海洋生物、さらには我々の地域社会に直接的な影響を及ぼす気象現象は、調査と探査を通じて発見できる」。オブザーバーでラパ・ヌイ海洋評議会委員のマルセラ・ヘイスはそう語った。
(翻訳:鈴木聖子)
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