タイ国境付近をパトロールするカレン民族解放軍(KNLA)の兵士(4月15日) ATHIT PERAWONGMETHAーREUTERS
<貿易の要衝を制したカレン族の武装組織、タイ国境の「新しい現状」をめぐる戦略は>
ミャンマーで国軍と戦闘を続けている少数民族、カレン族の武装勢力は、東部カレン州でタイ国境沿いの重要な貿易拠点であるミャワディを制圧したと主張している。
カレン民族同盟(KNU)は4月12日付で声明を出し、軍事部門のカレン民族解放軍(KNLA)が、民主化勢力の結成した軍事組織の国民防衛隊(PDF)と共に、ミャワディに最後まで残っていた国軍の軍事基地を制圧したと発表。町も完全に掌握したと述べている。
「現時点で、ミャワディにある(軍事政権の)全ての拠点は攻撃され、占領されている」「国民は慌てずに協力することを勧める」
声明には奪取した大量の武器弾薬を示す写真が添付されていた。地元メディアは、町中で反政府勢力を歓迎する看板を前に兵士たちがポーズを取る、お決まりの写真も掲載している。
ミャワディ周辺では昨秋からKNLAとPDFが国軍を攻撃しており、4月5日にはミャワディの西10キロにある重要な拠点や基地を制圧。国軍の兵士477人とその親族140人が投降したとされている。KNUは引き続き国軍の部隊に降伏を求めたが、交渉は決裂。KNLAとPDFは9日午後に国軍の基地への攻撃を開始した。
この重要な貿易拠点の陥落が南東部の衝突にとって、さらにはミャンマーの内戦にとって何を意味するのか、詳しい分析は時期尚早だ。しかし、2021年のクーデターで権力を掌握した軍事政権にしてみれば、屈辱的な敗北であることは明らかだ。
避難民がタイ側に流入?
特に、複数の武装勢力が戦闘を繰り広げている北東部シャン州と、民族運動が続いている西部ラカイン州では最近、国軍が立て続けに大敗を喫していた。ブリュッセルに本拠を置くシンクタンクの国際危機グループのリチャード・ホーシーは、英ガーディアン紙に次のように語っている。
「ミャンマーで次に何が起こるかは、戦場での軍事的な損失だけの問題ではない。一連の容赦ない敗北が、軍事政権と予期せぬ政治的結果に及ぼす心理的な影響もある」
間もなく雨期が迫るなか、KNU側は勢力拡大と支配地域獲得の試みを止めて、現在掌握している国境沿いの要衝ミャワディとその税関、および国境管理の支配を固めるのか。それとも、モンスーンが到来する前にミャワディの西側で可能な限り多くの地域を奪うのだろうか。
今後の展開は軍事政権の対応にも大きく左右される。特に、最近の軍事的後退で彼らが好んで行う報復的な空爆は、KNLAの支配地域のさらなる拡大を妨げ、カレン州東部の避難民がタイ国境を目指すなど、住民の大規模な移動につながる可能性がある。
今後、KNUは難しい選択を迫られることになりそうだ。ミャワディを経由する貿易の持続的な流れから利益を得ようとするなら、自分たちの支配地域から軍事政権の支配地域へ物資を確実に輸送できるように、何らかの方策を講じる必要がある。
そうした「協力」が、カレン州における新しい現状の固定化の序章となるのか、それとも紛争の休止にすぎないのかは、まだ分からない。
From thediplomat.com
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