Viacheslav Ratynskyi-REUTERS

<クルスク州へのウクライナの越境攻撃で、既に補給路の橋3本を失っていたロシア。新たに設置した補給路までもが破壊されたことに>

ロシア西部クルスク州への越境攻撃を続けるウクライナ軍だが、ロシア軍にとって重要な補給路である「浮橋」や周辺のインフラに攻撃を仕掛け、これらを完全に破壊することに成功した。米国製のHIMARSによる爆撃とみられ、攻撃の様子を撮影した映像を見ると、クラスター弾が広範囲に降り注いで周囲の施設に大きなダメージを与えていることが分かる。

■【動画】ウクライナ軍、ロシア国内でHIMARSによる爆撃...クラスター弾で広範囲のインフラを破壊する映像

この動画はウクライナの特殊作戦部隊がSNSに投稿したもので、軍用機から撮影されたもの。クルスク州のセイム川に架かる浮橋が映し出され、その後にこの軍用機がロシアのインフラを攻撃し、その過程で橋が破壊される様子が確認できる。

高機動ロケット砲システム(HIMARS)が使用されたとみられる一連の攻撃に先立ち、ウクライナ軍はセイム川に架かる3本の橋(ロシア軍が補給路として使用していた)を破壊していた。ロシア軍は浮橋を設置して新たな補給路の確保を試みたが、今回の攻撃でその浮橋も破壊された形だ。

ウクライナ空軍の司令官であるミコラ・オレシュチュク中将は、ウクライナ軍が8月19日にクルスク州の橋を破壊し、「敵の補給能力を奪った」と述べた。

アメリカが提供したHIMARSを使用した攻撃

ロシアのあるテレグラムチャンネルには、クルスク州の集落スヴァンノエにある橋への攻撃は、ウクライナ軍がアメリカから供与を受けたHIMARSを使用したものだと記されている。同アカウントには18日の時点で、「この地域に残る橋はあと1本のみだ」と書かれていた。

これに加えてロシア外務省の報道官は、ウクライナ軍がクルスク州の国境地帯にある集落グルシュクヴォの近郊で、セイム川に架かる別の橋を「西側製の武器、おそらくアメリカのHIMARS」で「完全に破壊した」と述べた。

ウクライナ軍は8月6日にロシア軍の不意を突いて越境攻撃を開始した。クルスクへの攻勢で進展を続けており、ロシア国内の複数の前線での争いは激しさを増している。外国の軍がロシアの領土に侵攻したのは、第二次世界大戦以降で初めてのことだ。

ウクライナは、同国軍が越境攻撃を開始してからクルスク州で制圧した領土の面積について、ロシア軍が2024年に入ってからウクライナで占領した領土の面積を上回ると主張している。

越境攻撃はロシア軍の「物資補給の遮断が目的」

ロシアの調査報道サイト「アゲンツトヴァ(Agentstvo)」によれば、ウクライナ軍は約24時間で、クルスク州の主な2つの防衛線を突破した。これらの防衛線は、ロシアが2年半の時間と1億7000万ドル超の資金を投じて建設したものだという。

ロシアはウクライナとの国境地帯に予備軍を投入したが、それでもウクライナ軍の進軍阻止に苦慮しており、ウクライナ側は自国軍がクルスク州で足場を固めつつあるとしている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍がクルスク州で少なくとも80の集落を支配下に置いたと主張した。

ウクライナは今回の越境攻撃について、ロシアの領土を恒久的に掌握するためではなく、ロシアの戦争遂行努力を支える物資補給を遮断し、自国の領土をきわめて破壊的な空爆から守るためのものだとしている。

本誌はこの件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。

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