8月21日、堅調だったドルが急落し、円安に歯止めがかかった世界的な外為市場の波乱を経て、ユーロが明確な「勝ち組」通貨として浮上してきた。写真はユーロとドルの紙幣。2023年3月撮影(2024年 ロイター/Dado Ruvic)

堅調だったドルが急落し、円安に歯止めがかかった世界的な外為市場の波乱を経て、ユーロが明確な「勝ち組」通貨として浮上してきた。

ユーロは足元で1ユーロ=1.10ドルの節目をはっきりと突破。月初めから2.5%余り上昇しており、8月は昨年11月以来で最も高い上昇率を記録しそうな勢いだ。


 

7月31日の日銀による利上げを受けた円の急伸と、米利下げ観測の高まりを背景とするドル安に気を取られていたトレーダーらも、ユーロに関心を持ち始めている。

なにしろ4月時点で1ユーロ=1ドルに下落するとさえ予想されていたユーロが、過去に難攻不落だった1ユーロ=1.10ドルを超えてきたからだ。

現在、ユーロは主要通貨の中で年初来の対ドル上昇率がポンドに次いで2位となっている。また、新興国市場通貨の弱さにも支えられているとは言え、ユーロの実効レートは過去最高水準に達した。

ユーロ/ドルの上昇は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が強まる一方で、ユーロ圏でサービス価格のインフレ率が高止まりして欧州中央銀行(ECB)の利下げ余地が限られるとの見方が広がる中で起こった。

コメルツバンクの通貨アナリスト、フォルクマール・バウア氏は「テーマは金利差だ」と語る。

「インフレ率は米欧両方で鈍化しているが、今後はFRBの方がやや積極的に利下げを進めると予想されている。これにより金利差は少し縮まりユーロが上昇しやすくなる」と同氏は述べた。

金融市場の織り込みを見ると、6月に利下げを実施したECBは年内に少なくともあと2回、25ベーシスポイント(bp)の追加利下げを行う見通し。対照的に、FRBは年内あと3回の連邦公開市場委員会(FOMC)全てで25bpの利下げを実施するだけでなく、そのうち1回はより大幅な利下げになる可能性が大きく織り込まれている。

8月初めに比べ、ECBについての織り込みは大きく動いていない一方、FRBの利下げ幅見通しは30bpほど拡大している。

米雇用統計が弱く、景気後退観測が広がって株と債券市場が荒れたことが、市場の見通しが変わるきっかけだった。

6月にはフランスの政治リスクがユーロを圧迫したが、そうした懸念も和らいだ。

フィデリティ・インターナショナルのマクロ・ストラテジック資産アロケーション・グローバル責任者、サルマン・アハメド氏は「フランスの選挙など、ユーロのリスク要因が一部取り除かれた。純粋に金融政策をテーマに動く相場になりつつある」と語った。

もっとも、ここから先はユーロの上値が重くなるかもしれない。

ユーロは現在、最近のレンジの上限近くで推移している上、金利差がさらにユーロを支援する方向に動く余地は狭まっているからだ。

コメルツバンクは、年末のユーロ/ドルを現在とほぼ同水準の1.11ドルと予想している。

INGは、1カ月後が1.12ドルで、その後は1.10ドルに下がると予想。BofAの年末予想は1.12ドルだ。

BCAリサーチのチーフ欧州投資ストラテジスト、マシュー・サバリ氏は「1.05ドルでユーロを買い、1.10ドルを超えれば売る」レンジ取引を推奨している。

一方、米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利すれば、関税引き上げと減税の組み合わせによりインフレ率が高まり、FRBがタカ派的になってドル高につながるとアナリストは見ている。

ラボバンクの通貨ストラテジー責任者、ジェーン・フォリー氏は、足元のユーロ高の背景に、民主党候補のハリス米副大統領の支持率上昇があると指摘。「ユーロ/ドルが1.10ドル超え水準をしっかり維持する可能性があるのは、ハリス氏が勝利し米景気が減速した場合だ」と述べた。



[ロイター]


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