米中西部イリノイ州シカゴで開かれた民主党全国大会で、ハリス副大統領の登場に沸く会場=2024年8月19日、秋山信一撮影
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 米中西部イリノイ州シカゴで開催中の民主党全国大会は、7月の共和党全国大会とは会場の雰囲気が異なっている。どちらも11月の大統領選に向けた党内の盛り上げには成功しているが、カラーの違いも鮮明だ。

 民主党大会2日目の20日夜、各州の代議員らによる大統領候補の指名投票の開始が告げられると、軽快な音楽が流れ出した。「皆さん、DJキャシディーです。今からロールコーーール(点呼投票)をやろうぜ」。グラミー賞候補になったこともあるDJキャシディーさんが叫ぶと、会場は歓声に包まれた。

 進行役が州の名前を順番に告げるのに合わせて、キャシディーさんが州にちなんだ曲や州出身者の曲を流す。指名された州の知事や党幹部らが短いスピーチの後、次々とカマラ・ハリス副大統領(59)への支持を表明していった。

 既に8月上旬にオンライン投票で結果は確定しており、今回の投票は形式的だった。しかし本来、指名投票は全米各地から集まった代議員団の最大の見せ場だ。盛り上げに一役買ったキャシディーさんは米メディアに「選曲は自分が提案した。各州に特別な意味を持つ曲を流すのが大切だと思っていた」と語った。

米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた共和党全国大会の参加者ら=2024年7月15日、秋山信一撮影
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 音楽の演出では共和党大会も負けていなかった。主にイベントの専属バンドとして活動する「シックスワイヤ」が4日間、往年の名曲のカバーを中心に生演奏。ドナルド・トランプ前大統領(78)の支持者であるカントリー歌手リー・グリーンウッドさんと共に「ゴッド・ブレス・ザ・USA」(米国に神の祝福を)を演奏したほか、機材のトラブルで進行が遅れた際に場をつなぐ場面もあった。

 ただ、共和党大会ではあくまで音楽は脇役だ。指名投票の際も会場はいったん静まり、各州の代議員団のスピーチを聞いていた。曲調もポップな民主党に対して、共和党はカントリーやロックが多かった。

共和党は「トランプグッズ」

 会場の雰囲気で最も異なるのが、集まった支持者らの顔ぶれや服装だ。

 共和党大会は白人が大半で、トランプ氏の支持者が多い内陸部の農村の人種構成に似ていた。帽子やシャツ、ピンバッジなど「トランプグッズ」で身を固めた支持者も目立った。

 対照的に、民主党大会では黒人や中南米系も多く、党の支持基盤がある沿岸部の都市の雰囲気を漂わせている。会場ではハリス氏のグッズも販売されているが、身につけている人はそれほど目立たない。性的少数者(LGBTQなど)に配慮する民主党らしく、誰でも使える「ジェンダーニュートラル」のトイレも用意されていた。

 演説やシュプレヒコールには、党の現状も映し出されている。

 共和党ではトランプ氏の選挙スローガン「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(米国を再び偉大に)」を引用する応援演説が多かった。演説に応えるように会場から湧くシュプレヒコールも、大会直前に銃撃された際にトランプ氏が言った「ファイト(戦え)」や定番の「USA」が合言葉となっていた。

 一方、民主党のハリス陣営は、演者の「ホエン・ウィー・ファイト(我々が戦う時)」の呼びかけに対して、聴衆が「ウィー・ウィン(我々は勝つ)」と応えるコールを定着させようとしている。しかし、本格的に選挙運動を始めたばかりで、応援演説で引用されることはあまりない。

 オバマ元大統領が自身の選挙スローガンを応用した「イエス・シー・キャン(彼女ならできる)」、全米自動車労働組合(UAW)のフェイン委員長が使った「トランプ・イズ・ア・スキャブ(トランプ氏はスト破りだ)」などの独自のキャッチフレーズを聴衆が自然発生的に連呼する場面が相次ぎ、シュプレヒコールにも「多様性」が出ている。【シカゴ秋山信一】

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