ロバート・ケネディ・ジュニア氏=21日、AP

 11月の米大統領選に無所属で出馬を目指していた弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏(70)が選挙戦から撤退する見通しとなった。

 ケネディ氏が撤退すれば、保守票がケネディ氏に流れるのを警戒していた共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)にとっては朗報で、民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)が勢いづく流れが変わるか注目される。

 「大統領(トランプ氏)がケネディ氏の支持を得ようとしてきたのは知っている。ハリス氏率いる民主党に見捨てられたと感じている古参の愛国的な民主党員をケネディ氏は代表しており、我々は歓迎する」

 共和党副大統領候補のJ・D・バンス連邦上院議員(40)は21日のNBCニュースのインタビューで、ケネディ氏からの支持表明に期待感を表した。民主党の名門一族出身のケネディ氏が「トランプ氏支持」を表明すれば、19~22日の全国大会で結束を図る民主党に、冷や水を浴びせる効果もある。

 ただ、バンス氏は、支持表明の見返りとして当選した場合に閣僚ポストを割りあてるとの報道については「トランプ氏がそんなことを明言するはずがない」と否定的だ。政治的な取引との悪印象が広まることをけん制した。

 トランプ氏は従来、「ワクチン懐疑論」などに共鳴する保守派の一部がケネディ氏に流れ、票が奪われるのを懸念していた。

 7月中旬には、電話で「あなたにしてほしいことがある」と暗に出馬断念を働きかける様子を収めた動画がインターネット上に流出している。今月20日には、自身への支持を表明すれば、当選時に要職への起用を「検討する」と踏み込んだ。

 ただ、ケネディ氏の撤退や支持表明が、そのままトランプ陣営の上積みになるとは限らない。中西部イリノイ州シカゴでケネディ陣営の集会などを開催してきた医師のローラ・チェンバレンさん(69)は「民主、共和両党による既存政治に嫌気がさしていたので、本当に撤退するとすれば残念だ。仮にケネディ氏がトランプ氏を推薦したとしても、ケネディ氏の支持者の考え方は多様で、全員がトランプ氏に回るわけではないと思う」と説明した。

 また、ケネディ陣営には、民主党のジョー・バイデン大統領(81)とトランプ氏の「高齢対決」に失望した有権者も集まっていた。20歳以上若いハリス氏に候補を差し替えた民主党と異なり、共和党候補はトランプ氏のままで、新鮮味を求める有権者がハリス氏に流れる可能性がある。

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の各種世論調査の集計(21日時点)によると、「1対1」を想定した場合、支持率はハリス氏(48・2%)がトランプ氏(46・7%)をやや上回る。11月5日の投票日まで約2カ月半となり、接戦州を中心に両陣営の対決がヒートアップしそうだ。【シカゴ秋山信一、松井聡】

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