ウクライナ軍の激しい越境攻撃が続くロシア西部クルスク州の町(8月20日) 95th Air Assault Brigade/Handout via REUTERS
<ウクライナ軍がロシア領内で攻撃を続けるのを見かねたロシア人エリートの間には核攻撃を求める「極論」も>
ウクライナ軍はロシア西部クルスク州への越境攻撃を続けており、作戦開始から2週間で同州の少なくとも92の集落を制圧したと明らかにしている。こうしたなかロシアのある政治家が国営テレビで、自身の出身地でもあるクルスク州への絨毯爆撃を呼びかけた。
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ロシアの元国会議員ナターリャ・ナロチニツカヤは、ロシア国営第1チャンネルに出演して絨毯爆撃を呼びかけ、ロシアの独立系ジャーナリストによるテレグラムチャンネル「アストラ」が8月19日にその内容を共有した。
「クルスク州で起きたあらゆることを考えると、そのぐらいの報復を実行すべきだ!」とナロチニツカヤは主張した。「ウクライナ軍を包囲して、全てを破壊するべきだ。それには絨毯爆撃だ。その準備が進められていることを願う」
ナロチニツカヤの発言を共有した以下の投稿に付けられた英語の翻訳コメントによると、彼女は「数千人もの住民を避難させたのは、絨毯爆撃のために他ならないはずだ」と言っている。
"I hope there's already preparation (to carpet bomb Kursk Oblast). Because this much evacuation is not for nothing.
— Natalka (@NatalkaKyiv) August 19, 2024
Why else evacuate so many thousands of people?"
- Russian politician Natalya Narotchnitskaya on Russian state TV Channel One. #Russia pic.twitter.com/3WMrcqSTIo
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日、ウクライナ軍が同国北東部のスームィ州から国境を越えてロシア西部のクルスク州への攻撃を開始して以降、ロシアの領土1250平方キロメートルを掌握し、92の集落を制圧したと発表した。
核攻撃も選択肢
越境攻撃の規模はかなり大きく、ウクライナ軍は8月6日に越境攻撃を始めてからこれまでにクルスク州で制圧したロシア領の面積が、ロシア軍が2024年に入ってから制圧したウクライナ領の面積を上回るという。
ロシアの領土が外国の軍の侵略を受けるのは、第二次大戦後初めてのことだ。クルスク州では大勢の住民が自宅からの避難を余儀なくされている。
本誌はこの件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。
ナロチニツカヤの「絨毯爆撃」発言に先立ち、ロシアのプロパガンダ記者であるセルゲイ・マルダンは国営テレビのトークショー「ソロビヨフ・ライブ」の中で、クルスク州への核攻撃をほのめかしていた。
マルダンは、もしもロシアがクルスク州への越境攻撃の報復として核兵器を使用すれば、世界は「動揺し、憤る」だろう。しかし大衆は、最終的にはそれが合理的な判断だったと理解するだろう、と次のように述べた。
「過去2年の間、ロシアが核攻撃を行うことなど不可能だと散々議論されてきた。それがどのような結果を招くのか、西側はもちろん、グローバルサウスも敵に回すことになると。だが現在の状況を考えれば、少しは動揺し憤ったとしても、全体としては『合理的な対応だ』と言うだろうと個人的には確信する」
さらにマルダンはこう続けた。「戦闘は単にロシアの領土で行われているというだけではない。クルスク州で行われているのだ。クルスクはロシアの核そのものだ。赤軍がドイツ軍と激戦を交わしたクルスクは、ほかの何かと比べることなどできないほど重要な土地だ。そこで今、戦闘が行われている」
「それを思えば、ウクライナの軍事施設に対して核兵器を使用した攻撃が行われるシナリオも、あり得ないことではなくなるだろう」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友であり、ロシア南部チェチェン共和国の特殊部隊「アフマト」の司令官であるアプティ・アラウディノフは20日、クルスク州での戦闘は今後数カ月にわたって続くという見通しを示した。
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