タイで前首相の失職に伴い、史上最年少のペートンタン首相が誕生し、近く新政権を発足させる見通しです。

タイでは、セター前首相が、内閣人事を巡る倫理違反で失職したことを受けて、8月18日、最大与党「タイ貢献党」の党首・ペートンタン氏が首相に就任しました。

37歳で就任したペートンタン首相は、タクシン元首相の次女で、タイでは史上最年少となります。

現在、組閣作業が行われていて、近く発足する新政権は、国軍の流れをくむ保守派との連立が維持される見通しです。

ただ、ペートンタン首相は閣僚を務めたことがなく、政治経験の乏しさからタクシン氏の影響力が強まる可能性が指摘されています。

このニュースについて、立石修解説委員室長が詳しくお伝えします。

今回就任されたペートンタン首相は、当然タイでも最年少の首相ということで、世界的にも大きな注目を集めています。

選挙活動中も、まるでコンサートのような盛り上がりを見せ、熱烈な支持を受けていることが分かります。

また2児の母でもありますが、2人目の子どもの出産日が選挙活動期間と重なり、妊娠7カ月の時も壇上に上がって、力強く演説を行っていました。

そして、出産するとすぐさま、病院で保育器に入ったままの赤ちゃんをお披露目するなど、これまでにないスタイルの選挙戦も展開して、注目を集めてきました。

そして、SNSも頻繁に更新していて、夫とのツーショットや家族での海水浴の写真など、政治家としてだけでなく、プライベートも大切にしている姿を有権者たちにアピールしてきました。

こういったSNSを利用する姿も、現代の政治家だという印象を受けます。

ペートンタン首相は若くて勢いもある印象ですが、一方で政権の運営が厳しくなるのではないかという声もあります。

問題は、父親であるタクシン元首相の存在。
タクシン氏は2001年に首相に就任して、貧困層からはカリスマ的な支持を受ける一方で、都市部の市民などからは、“ばらまき”との批判も受けてきた人物です。

熱烈な支持を受ける一方で、強烈な反発も受けてきた人物ですが、タイには王室もあり、タクシン氏は立憲君主制に懐疑的な発言などもあって、保守派の反発も受け、軍とも対立。

そして、2006年には、国軍によるクーデターが起きて国外に逃亡、事実上の亡命生活に入りました。

しかし、その後も農村部などでのタクシン氏への支持は根強くて、義理の弟や妹などが首相の座に就いてきました。

ただ、軍や検察との緊張関係はその後も続き、クーデターなどで失脚してきたということです。

そんな中、タクシン氏は2023年、海外の逃亡先からタイへ帰国しました。
そして一時収監されましたが、恩赦で釈放されました。

そして、これを機に娘を首相に据えたということです。

このペートンタン首相率いる与党は現在、タクシン氏と対立をしてきた、国軍に近い政党と連立を組んでいます。

しかし、ペートンタン首相は、父親であるタクシン氏に助言を求めるとしていて、今後タクシン色が強まる可能性があり、国軍などは非常に警戒しているのが現状です。

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