ネットでもリアルでも11月まで勢いは続くか?(8月20日、ウィスコンシン州ミルウォーキーの選挙集会で話すハリス)REUTERS/Marco Bello

<カマラ・ハリスが若者向けのSNSで快進撃。上の世代からはなかなかアプローチが難しいZ世代のハートもがっちり掴んだ。偶然ではない。背景には、ハリス陣営の卓越したSNS戦略があるという>

カマラ・ハリス米副大統領のソーシャルメディアを利用した選挙活動は絶好調だ。それは偶然の産物ではなく、きわめて明確な対若者戦略に基づいて行われているようだ。

【動画】再生回数361万を超えたカマラ・ハリスについてのファン映像まとめ

7月21日、ジョー・バイデン大統領が退任し、ハリスが今年11月の大統領選挙において民主党候補となることが発表されると、カマラの選挙チームはすぐに動いた。数時間のうちに、@BidenHQのソーシャルメディア・ページは、@KamalaHQに姿を変えた。これまでのところ、ハリスに関する投稿はTikTokとインスタグラムでおおいにバズっている。

実際、CNNの数字によると、@BidenHQのTikTokへの投稿は335回で、1回あたりの再生回数は約50万回だった。これに対して、@KamalaHQは7月から1投稿あたり平均600万再生されている。

ライトファインダー・パブリックリレーションズの創設者グレイス・マコーミックが本誌に語ったところによると、ハリス陣営が若い有権者をターゲットにソーシャルメディアを活用していることは間違いない。彼らは、Z世代(1997年から2012年生まれの若者)の心に訴える方法について「微妙なところまで理解」を示しているという。

リアルタイムで同調

「ブラット(悪ガキ)・サマー」のような若者の流行に乗ったり、ココナッツの樹の絵文字をミーム化して人気を集めたり、とハリスのキャンペーンはZ世代とのつながりを築き、彼女の人気を高めている、とマコーミックは言う。

「ハリスのSNS戦略が成功している理由のひとつは、即応性と対応力だ。Z世代はリアルタイムの交流や本物を重視している。ハリス陣営は、選挙運動がこの瞬間の若者文化に同調していることを示すために、トレンドのトピックに素早く乗ってきた」

「このアプローチは政治家に人間味を与え、親近感を抱かせる。Z世代と同じデジタル空間に参加し、同じ言葉を使うことで、世代間のギャップを埋め、政治家は遠い存在だという固定観念を取り払うことができる」

ハリス陣営は、オンラインで若い有権者を取り込むだけでなく、それぞれのプラットフォームに合わせたコンテンツを用意している。TikTokではキレのある動画で注目を集め、インスタグラムでは舞台裏を見せる趣味のいいコンテンツを提供している。

バズりやすいコンテンツを提供し、さらに各プラットフォームが提供するユニークな機能をフルに活用すれば、SNSの効果を最大限に発揮できる。

以前にも政治運動に携わったことがあるマコーミックによれば、今回のハリスの選挙戦略は確かな革新性と創造性を示しているという。「ハリスのキャンペーンは、単にZ世代に語りかけるだけでなく、彼らを巻き込み、彼らと交流している」と彼女は続けた。

「ハリス陣営は、その時々の状況に精通している。オンライン上の適切な場所にいるだけでなく、ユーモアや信憑性をもって関与し、有権者の共感に訴える」とマコーミックは言う。

フェイヒー・コミュニケーションズのマイケル・フェイヒーCEOは、2023年の大統領選挙キャンペーンでスティーブ・ラフィーの報道官を務めるなど、過去に複数の選挙運動に携わってきた。

彼によるとハリス陣営がこれまでと違うのは、有権者のタイムラインに議題を持ち込まず、政策に触れることすらせずに、ハリス個人を前面に押し出している点だ。

TikTokをスクロールするとき、有権者は政治的スタンスや信条について聞きたいだろうか?おそらく違うだろう。面白いクリップやキャッチフレーズは見たいか?もちろんだ。

統合されたメッセージ

「アメリカの若者は選挙広告に関心がなく、多くの有権者は現実逃避のためにソーシャルメディアを使っている。ソーシャルメディアを選挙活動に使うのは、丸い穴に四角い杭を通すようなものだが、ミームを拡散するために使うのであれば、受け手への理解を示すことができる」とフェイヒーは言う

これまでの候補者はスローガンやグッズは使ったが、ハリスのキャンペーンはそれとは比べものにならないとフェイヒーは言う。政治家たちはかつて、ソーシャルメディアを全力で避けていたし、ミームになることは最悪の悪夢だった。だが今は、そうではない。

「ハリスの陣営はそれを受け入れ、有権者から絶大な支持を得ている。彼らの選挙キャンペーンには若々しい雰囲気がある。それは若者という重要な有権者にアプローチする方法について、適切な人々が重要な決断を下していることを示している」とフェイヒーは言う。

「彼らはブラット・サマーとココナッツの樹でメッセージが政治広告にならないよう調整し、全体をシームレスに統合した」

6件の異なる世論調査でハリスがドナルド・トランプ前大統領をリードしていることからすれば、それはうまくいっているようだ。だが、グティエレスによれば、ハリス陣営は現状に甘んじることなく、勢いを加速していかなければならない。

「最近の世論調査でハリスがトランプに対して優位に立っているのは、彼女のデジタル・キャンペーンの効果によるところが大きい。しかし、トレンドコンテンツの賞味期限はせいぜい10日程度だ」

「ハリスの優位は意外ではないが、確実なものでもない。それはハリスのデジタル戦略担当者が心に留めておくべきことだ」

この一風変わった政治戦略によって、ハリスは有権者と親密な関係を築き、彼女の選挙運動との一体感を感じさせることができた。これにより、彼女に好感を抱かせるだけでなく、「感情的な結びつきを強める」効果もあるとグティエレスは言う。

しかし、効果はここまでかもしれないし、逆効果になる可能性もある。

「潜在的なメリットはあるものの、ハリスと彼女のチームは、砕けすぎた印象を与えないように注意しなければならない」と、グティエレスは本誌に語った。「あまりにも型破りなやり方は、ハリスのイメージに悪影響を与え、他の有権者を遠ざける可能性がある」

「世間に対してバランスをとることはきわめて重要だ。ソーシャルメディアとの関わりで、信頼性や選挙運動の認識が損なわれないようにすべきだ」

ハリスは自分らしさ満開のブラットな夏を過ごしているかもしれないが、有権者を惹きつけておくためには、もっとやらなければならないことがある。秋になったら、彼女はどんなシーズンを過ごすのだろうか?

【動画】再生回数361万を超えたカマラ・ハリスについてのファン映像まとめ

why did I stay up till 3am making a von dutch brat coconut tree edit featuring kamala harris and why can't I stop watching it on repeat pic.twitter.com/hqcmerD1Pb

— ryan (@ryanlong03) July 3, 2024

【動画】7月22日に拡散されたハリス米副大統領のフェイク動画

"Today is today. And yesterday was today yesterday. Tomorrow will be today tomorrow. So live today so that future today will past today, as it is tomorrow."

-- Kamala for President, 200 IQ pic.twitter.com/4WYLqyxnQL

— JaguarAnalytics (@JaguarAnalytics) July 21, 2024

上の動画は、カマラ・ハリスの演説のとりとめのなさを皮肉ったものとか。この動画の記事はこちら


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