ハリス(右)が選んだ副大統領候補ウォルズ(左)は見事なほど「普通」の経歴 KEVIN MOHATTーREUTERS

<民主党の副大統領候補は「中西部のパパ」、「奇妙な」トランプ陣営との対比を強調する戦略へ>

昔は高校教師でアメフトのコーチ、そして多くのアメリカ人が名前を聞いたこともなかった男。米民主党の大統領候補カマラ・ハリスが副大統領候補に選んだティム・ウォルズは、そんな人物だ。

投票が2カ月半後に迫った米大統領選の主役は、もちろん民主・共和両党の大統領候補であるハリスとドナルド・トランプ前大統領。だが、その中でウォルズは重要な存在感を示しそうだ。


民主党は近年、都市部の高学歴層に支持を広げているが、ウォルズは地方の労働者層にルーツを持つ。ネブラスカ州の小さな町で教師の父と地域活動家の母の下に生まれ、17歳で州兵に入隊。公立大学を卒業後、ネブラスカ州で教師として働いているときに現在の妻グウェンと出会う。

Growing up, I learned to be generous toward my neighbors, compromise without compromising my values, and to work for the common good.@KamalaHarris and I both believe in that common good - in that fundamental promise of America. We're ready to fight for it. And like she says:... pic.twitter.com/5SfrDRqx7C

— Tim Walz (@Tim_Walz) August 6, 2024

その後10年、グウェンの故郷ミネソタ州の高校で地理の教員として勤務。アメフトコーチや、生徒による性的少数派の支援組織の顧問も務めた。

政界入りのきっかけは、2004年に生徒を引率し、当時の共和党大統領候補ジョージ・W・ブッシュの集会に参加しようとしたとき。生徒の1人がブッシュの対立候補で民主党のジョン・ケリーのステッカーを持っていたため、入場を断られた。怒ったウォルズは翌日、ケリー陣営のボランティアに登録した。

こうして06年には、ミネソタ州南部の選挙区から連邦下院選に出馬して当選。共和党の地盤だった選挙区で、その後6選を果たす。18年にはミネソタ州知事選に勝利し、22年に再選された。

結婚記念日は6月4日

下院選に初出馬したときは中道派の民主党員というイメージを打ち出し、全米ライフル協会からの支持もアピール。党の方針に逆らって、主に中国の脅威への懸念から国防費削減に反対したこともある。

ウォルズは中国で英語を1年間教え、新婚旅行先にも中国を選んだ。夫妻で学生向けの中国ツアーを運営する会社を設立したこともある。

この経歴から下院議員時代には、中国の人権と法治を監視する委員会の委員に就任。香港の民主化運動活動家を支持し、ダライ・ラマ14世をはじめチベット亡命政府の指導層ともたびたび会見している。

結婚したのは1994年6月4日。天安門事件の記念日だ。「忘れない日を彼が選んだ」と、グウェンは言う。

率直な物言い、「中西部のパパ」を思わせるキャラクター、七面鳥の捕らえ方からピックアップトラックの修理法まで何でも知っていそうな元州兵──そんなウォルズが中西部の幅広い有権者から共感を集めることを、ハリス陣営は期待する。当選すれば初の女性、初の黒人女性、初のアジア系の大統領となるハリスとは正反対。彼はどこから見ても、昔ながらの政治家だ。

ハリス陣営はトランプと副大統領候補のJ・D・バンスに言及する際に「weird」(ウィアード、「変な、奇妙な」の意)という言葉を多用し、「普通」であるウォルズとの対比を狙っている。ウォルズの副大統領候補起用を発表したX(旧ツイッター)のポストで、ハリスはウォルズに対して「あなたはこの国を理解している」と語っている。

When I called @Tim_Walz this morning to ask him to join our campaign, I shared my deep level of respect for him and the work we've done together.

We're going to unify this country and we're going to win.

Let's go get this done. pic.twitter.com/EcqZ497lyk

— Kamala Harris (@KamalaHarris) August 6, 2024

ウォルズのアメリカへの理解が勝利をもたらすのか。答えは11月に出る。

Jared Mondschein, Director of Research, US Studies Centre, University of Sydney

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.


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