西ベンガル州の集会で候補者と共に支持を訴えるモディ(中央、4月16日) ANI PHOTOーREUTERS
<インドの総選挙は4月19日から6月1日まで続き、モディ首相とインド人民党の強固な支持が選挙結果を大きく影響する>
インドの総選挙は4月19日に始まり、6月1日まで6週間続く。この選挙は一見、今年南アジアで行われた他の2つの選挙と似ているように見えるかもしれない。
1月のバングラデシュ、2月のパキスタンと同様、現政権の勝利が予想され、野党指導者の失脚や政府批判派の取り締まり強化を背景に投票が行われる。だがインドの選挙と政治状況は、この地域全体の政治動向とは対照的だ。
主な理由は長期間続くモディ首相と与党・インド人民党(BJP)の高い人気にある。最近の調査によると、モディの支持率は75%。2014年から政権を担ってきた政府の長としては異例の数字だ。
要因はいくつもある。モディの人柄、指導力、実績、イデオロギー、野党の弱さ。総選挙で問われているのは与党が勝つかどうかではない。どこまで勝つかだ。
反モディ派の多くは公平な選挙ではないと主張する。現政権は野党指導者を恣意的に逮捕し、選挙管理委員会への影響力を強め、反対派を選挙で不利な立場に追い込んでいると、彼らは指摘する。
だが、それがなくてもBJPへの支持は圧倒的だ。野党への締め付けがなかったとしても、総選挙の結果はあまり変わらないかもしれない。
BJPは直近の州・地方レベルの選挙で、主要野党のインド国民会議派や地域政党に敗れている。それでも全国レベルで見れば、野党勢力はBJPに到底及ばない。
南アジアでは、モディとBJPほど長く政権を維持してきた例はほとんどない。
ネパールでは08年の王制廃止後、10回以上首相が交代。パキスタンは同年に軍事政権が終わってから、権力基盤の弱い連立政権が続いている。スリランカのウィクラマシンハ大統領は、前任者が反政府デモを受けて辞任した後、22年に就任したばかりだ。
09年から政権の座にあるバングラデシュのハシナ首相だけが、南アジアではモディ政権より長い。ただし、この国の選挙は国際的な選挙監視団から自由でも公正でもないとの評価を受けている。
モディ人気と、首相に対抗し得るカリスマ的指導者を出せない野党の現状を考えれば、モディが首相の座にある限り、政治的脅威に直面する可能性はほとんどなさそうだ。
だがBJPは今回の総選挙で勝ったとしても、遠くない将来に転機を迎えるかもしれない。もしモディが29年に4期目を目指さずに引退すれば、BJPは後継者選びを含め、大きな問題に直面しそうだ。
ヒンドゥー至上主義の大義は今後も多くの支持者を引き付けるだろうが、その一方で深刻な失業問題や中国の脅威など、BJPを弱体化させかねない長年の懸案にうまく対処する必要がある。
ともあれ、今のモディは南アジアで最も人気があり、最長の政権を維持する指導者の1人。今回の総選挙も信任投票の色彩が強く、結果にほとんど意味はない。選挙や政治的動乱に揺れ続ける他の南アジア諸国とは大違いだ。
From Foreign Policy Magazine
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