困窮世帯からは夏休みの短縮・廃止を望む声まで聞かれる CryptoWolf/Pixabay
<地域によっては母子世帯の年収中央値が2人親世帯の3割にも達しない>
夏休みのさなかだが、共稼ぎの世帯では子どもの食事の準備が増えたと悲鳴が上がっている。物価高もあり、ご飯を食べさせることすらままならず、「給食がないのは辛い」という声も聞かれる。
NPO法人のキッズドアが初夏に行った調査によると、困窮している子育て世帯の6割が「夏休みの短縮・廃止を望む」と答えたという。学校の夏休みを無くしてほしい。子を持つ親から、こういう声が上がる時代だ。
特に深刻な状況に置かれているのは、1人親世帯だ。1日2食(1食)、この酷暑の中、電気代がもったいないからとエアコンもつけられない。まさに命に関わることで、親子ともども、憲法が定める生存権を脅かされていると言ってもいい。
これが大げさでないことは、1人親世帯(多くが母子世帯)の年収を見ると分かる。<表1>は、母子世帯の年収の中央値を掲げたものだ。地域差があるので、47都道府県別の数値を示している。
どの県でも300万円に満たない。全国値は226万円で、最も高い滋賀県でも265万円。200万円未満の県も6県あり、最低の青森県では183万円だ。税金を引いた手取りにするともっと少なくなる。
月収にすると、おおむね15~20万円ほどとみていいだろう。単身者ならともかく、育ち盛りの子が数人いる家庭だと、生活は非常に苦しくなる。1日2食(1食)、酷暑であってもエアコンをつけられない。こういう生活になっても、まったく不思議ではない。子どもに体験をさせようとレジャーや旅行に行くことなど、到底叶わないだろう。
生存を脅かされる絶対貧困の域にあると言ってもいいが、周囲と比較した相対貧困にも苦しめられる。上述のように母子世帯の年収中央値は226万円だが、夫婦と子の世帯(世帯主が30~40代)のそれは742万円。母子世帯の年収は、2人親世帯の3割ほどということになる。
地域によっては、この差はもっと際立っている。2人親世帯の年収中央値を100とした場合、母子世帯はどういう数値になるかを県別に示すと<表2>のようになる。
県別に見ると、母子世帯の年収が2人親世帯の3割にも満たない県がある。とくに東京は悲惨で、4分の1という有様だ。2人親世帯の年収はおよそ1000万円、母子世帯の年収は約250万円。収入の水準が高い大都市では、1人親世帯の相対貧困が際立つ。
周囲の子が習い事だ、旅行だという中、自分はそれを我慢しなければならない。会話にも入れない。子どもにこういう思いをさせていることに、シングルの親は心を痛めている。
6~14歳の学齢児童生徒のうち、1人親世帯で暮らす子の割合は11%、県によっては2割弱にもなる(『国勢調査』2020年)。決してネグリジブルスモール(無視できる少数)ではなく、政府が為すべきは支援の強化に尽きる。まずは絶対貧困の解消からで、食品購入券(ミールカード)の配布や、エアコンをつけるための電気代割引などを検討するべきだ。
それと養育費の取り立てだ。1人親世帯(大半が母子世帯)の貧困の原因は、女性の賃金が低い、幼子を預けてフルタイムで働きにくい、といったことだが、養育費の不払いも大きい。
不払いの場合は自治体が立て替え、代わりに徴収する制度にするといいだろう(明石市のように)。公の力をもってすれば、支払い義務者から税金の形で取り立てることも可能だ(細かな法改正は必要だろうが)。
子ども基本法がいう「全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること」を実現するに際して、1人親世帯の貧困解消は大きな位置を占める。
<資料:総務省『就業構造基本調査』(2022年)>
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