法政大学の浅見靖仁教授(タイ政治)=本人提供

 タイ憲法裁判所は14日、セター首相に対する解職請求を認めた。過去に有罪判決を受けた人物を閣僚に起用した責任が問われたが、保守派の意向が裁判所の判断に反映されたとみられる。そこにはどんな狙いがあったのか。識者に聞いた。

 法政大学の浅見靖仁教授(タイ政治)は今回の裁判について「依然として残る、国軍をはじめとする保守派の政治的影響力を示すこととなった」と指摘。ただし、保守派の最大の狙いは、セター氏ではなく、最大与党「タイ貢献党」の実質的指導者であり、最近になって本格的に政治活動を再開したタクシン元首相だったと解説する。

 2001〜06年まで首相を務めたタクシン氏は低所得層から絶大な支持を得たが、クーデターで失脚。海外での逃亡生活を経て、昨年8月、15年ぶりに帰国した。在職中の汚職などの罪で禁錮8年の実刑判決を言い渡されたが、国王による恩赦を受けて今年2月に仮釈放された。

 仮釈放後、タクシン氏は国内を飛び回るなど政治的影響力を再び強めようとする動きを見せている。また今回の裁判で起用が問題となった閣僚はタクシン氏と近い。浅見氏は「裁判は、こうした動きに対する保守派の憤りの表れであり、タクシン派への強い警告だ」と話した。【バンコク石山絵歩】

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