「難民歓迎」「極右を止めろ」などと記したプラカードを掲げて行進するデモ参加者ら=英ロンドンで2024年8月10日、AP

 移民排斥を訴える極右主義者らの暴動が続く英国で、極右や人種差別に反対する「対抗デモ」が10日、各地で実施された。英メディアによると、こうしたデモは7日以降、4日連続で行われ、参加者はいずれも極右側の規模を上回ったという。スターマー首相は9日、警察当局に対し「厳戒態勢の維持」を要請した。

 「難民や移民は大歓迎だ」。英BBC放送によると、北部スコットランドのエディンバラでは10日、議会の建物付近に集まった数百人が口々にそう声を上げた。首都ロンドンでも約5000人が「反極右」デモに参加。英全土では10日だけで、数万人規模の同様のデモが行われた。

 暴動のきっかけは、7月29日に英中部サウスポートで6~9歳の女児3人が殺害された事件だ。殺人容疑などで逮捕された17歳の少年の両親がアフリカ中部ルワンダ出身と報じられると、SNS(ネット交流サービス)上では「容疑者はイスラム過激派」「不法移民だ」といった偽情報が拡散した。

 これを受け、各地で「移民は出て行け」などと訴えるデモや暴動が発生。モスク(イスラム教礼拝所)や難民認定申請者らが滞在するホテルも放火され、これまでに700人以上が逮捕された。

 こうした極右側の動きに対し、各地の地元住民やリベラル系団体も「反極右」デモで対抗し始めた。英政府も警官を大量動員し、暴動鎮圧を進めている。

 BBCの分析によると、今回の暴動はSNSに影響力を持つインフルエンサーらが中心的役割を果たしたという。特に極右団体「イングランド防衛同盟」の創設者トミー・ロビンソン(本名スティーブン・ヤクスリーレノン)氏は、滞在先のキプロスから100万人近いX(ツイッター)のフォロワーに対し、暴動をあおるメッセージを投稿した。

米実業家のイーロン・マスク氏=パリで2023年6月16日、ロイター

 さらに状況を「かき回した」(ロイター通信)とされるのが、Xを運営する米実業家イーロン・マスク氏だ。暴動が激化する中、Xに「(英国での)内戦は避けられない」と投稿したため、スターマー首相の報道官が「(投稿内容は)正当化できない」と不快感をあらわにする一幕もあった。

 チャールズ国王は9日、スターマー首相や警察トップと電話し、暴動が起きた地域で活動する警官や救急隊員らへの謝意を伝え、英国民の「相互尊重と理解」の重要性を強調した。

 英国では不法移民への反発が根強く、7月4日投開票の総選挙でも移民対策が争点の一つになった。【ロンドン篠田航一】

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