イスラム組織ハマスの最高指導者殺害を受け、イランはイスラエルへの報復のため、ミサイルの発射台を移動させるなどしています。

一斉攻撃が近く行われる可能性があり、緊張が高まっています。

アメリカメディアによりますと、当局者の話として、イランがミサイルの発射台を移動させているほか、軍事演習を行うなど、数日のうちに報復攻撃を行う可能性があるとの見方を伝えています。

またイラン国営メディアは、2024年4月に行ったイスラエルへの攻撃よりも最新鋭のミサイルが使われる可能性があると報じていて、緊張が高まっています。

一方、アメリカのブリンケン国務長官は、イランとイスラエル双方に「紛争を激化させてはならない」と直接伝えたとしたうえで、これ以上の攻撃は「危険な事態を招く」と自制を求めました。

報復への緊張が高まっている中、ハマスの最高指導者のハニヤ氏殺害作戦の全容が見えてきました。
スパイ映画さながらの緻密なものだった可能性も出てきています。

このニュースについて、立石修解説委員室長が詳しくお伝えします。

ハニヤ氏の殺害現場とみられているのは、首都テヘランにある海外の要人をもてなすゲストハウスにあります。
大統領宮殿のあるサーダバード宮殿から約1kmという、まさに中心部です。

これまで、この建物の全貌は不明でしたが、ニューヨーク・タイムズが独自に入手した事件後のゲストハウスとされる写真があります。

イラン側は空爆によって殺害されたと主張していますが、建物は破壊されておらず、一部にわずかに黒く焦げたような跡が確認されるのみです。

つまり、空爆ではなかった可能性が高くなっています。

空爆でなかったとするならば、実際はどういう方法がとられたとみられるのでしょうか。

イスラエルメディアによりますと、イスラエルの情報機関モサドがこの作戦を実行しましたが、超小型爆弾を使って殺害作戦を立案したということです。

作戦決行にあたり、モサドは警備にあたっているイランの革命防衛隊の兵士2人を買収して、爆弾の設置役として作戦にあたらせたということです。

“寝返った”2人の兵士が鍵を握るわけですが、この2人はどういう人たちなのでしょうか。

革命防衛隊はイランの精鋭中の精鋭部隊になります。
イスラエル側から6桁の現金、ドル計算にすると、おそらく1000万円単位の報酬。
そして、作戦後には北欧の国への逃亡という2つの条件が提案されて、2人の兵士はイランを裏切ることになります。

恐らく“精鋭の裏切り”というのは、イラン中枢部にも大きなショックを与えていると思います。

その殺害方法は、イスラエルメディアによりますと、この兵士2人は午後4時23分にハニヤ氏が宿泊する部屋のベッドの下に超小型爆弾を設置します。

そのあと2人は現場を脱出し、イスラエルの手ほどきで1時間後にはイラン国外へ。

そして翌日の深夜、午前1時20分にハニヤ氏が外出先からゲストハウスに戻ってきます。

別の工作員が部屋の明かりが消えたことを確認して、午前1時37分、爆弾を遠隔で捜査して爆発させ、ハニヤ氏を殺害したというのが作戦の全貌になります。

──かなり緻密に行われている印象だが、狙いはどういったところ?
イランの大統領就任宣誓式が行われていて、この施設には、他にもイランに近い組織の幹部などが泊まっていました。
したがって、エスカレートを避けるためにハニヤ氏だけを殺害する必要があり、このような緻密な作戦を行ったといいます。
一方で、ハマスの後ろ盾であるイランで最高幹部ハニヤ氏を殺害することで、イランのメンツを潰す狙いもあったと思われます。

──そのイランが報復攻撃を行うとしていますが、この辺りの見立ては?
攻撃はほぼ確実に行われると考えられます。
イラン国内では、報復を求める声が強まっていて、ヨルダン川西岸などでも大規模なデモが行われています。
ただ、アラブ各国からは自制を求める声も出ています。
そのほかに、ロイター通信によりますと、イランと関係の近いロシアのプーチン大統領も攻撃を抑制的に行うようイラン側に伝えているということです。
したがって、規模については不透明な部分があるかと思います。

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