戦勝記念日パレードのリハーサルで披露されたTOS-1A(2021年5月7日、モスクワ) Free Wind 2014-Shutterstock

<ロシアの多連装ロケットシステム「TOS-1A」を破壊したとウクライナ保安庁が発表>

激戦が続くウクライナ南部において、ウクライナ軍がロシア軍のサーモバリック(燃料気化)爆薬弾頭ロケット弾を発射する装置の「破壊に成功した」と、ウクライナの政府機関が発表した。

【動画】燃料気化爆弾発射装置「TOS-1A」を爆破する劇的瞬間...FPVドローン、暗視カメラ映像をウクライナが公開

ウクライナ保安庁(SBU)が7月3日の声明で明らかにしたところによると、同国南部のザポリージャ州において、「TOS-1A(別名ソンスィピョーク)」システムを破壊したという。

ウクライナ保安庁は暗視カメラによる映像も公開した。そこには、FPV(一人称視点)ドローンが多連装ロケットシステムであるTOS-1Aに向かっていく様子とみられる映像が映っている。さらに別のドローンが、最初のドローンがTOS-1Aに衝突し、爆炎に飲み込まれる様子を記録している。

本誌は独自にこの動画の信憑性を確認することができなかった。

サーモバリック爆弾は、二段階の爆発によって従来の兵器よりも破壊力の大きな爆発を引き起こす。「真空爆弾」という名でも知られるこの兵器は、旧ソ連およびロシアによって、アフガニスタンやチェチェンで使われたほか、1960年代にはアメリカ軍によって使用されたこともある。

これらのサーモバリック弾頭ロケット弾による「焼夷効果および爆風効果」は、従来の爆薬を用いた兵器に比べて長く続くと、イギリス国防省は2022年3月に解説している。

「TOS-1Aの威力は壊滅的だ」と同省は述べ、こう説明している。「インフラを破壊し、人の内臓に甚大なダメージをもたらすとともに閃光熱傷を発生させ、その威力にさらされた者を死に至らしめる」

TOS-1Aは建物や塹壕といった標的に対して用いられることが多い。

TOS-1Aは数十発のサーモバリック弾頭ロケット弾を発射可能で、そのバージョンによって、それぞれ異なる主力戦車の車体に搭載されている。TOS-1AはTOS-1の改良版で、米軍によると、「より長いロケット弾を搭載可能になった結果、射程距離が伸びた」とされている。

ロシア国営の武器輸出業者、ロスオボロンエクスポルトはTOS-1Aについて、90秒以内に発射準備が整う重火炎放射器だと説明し、「非常に高い戦闘能力を備えた極めて致死性の高い兵器だ」としている。

ロシア国防省もTOS-1Aを「パニックを引き起こす」「並外れた」兵器だと形容している。

同システムは「ロシア軍産連合体の『誇り』であり、前線で標的となることは稀だ」と、ウクライナ保安庁は先述の声明で述べている。

アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は2023年6月、このサーモバリック弾頭ロケットランチャーについて、「破壊力が非常に高いが、数が不足している砲撃用装備でもある」と述べていた。

ウクライナ保安庁は今回爆破したTOS-1Aシステムについて、同国軍がその位置を確認し、照準を合わせた際には、「弾薬をフル装備しており、攻撃の準備が整っていた」としている。

ウクライナ側はこれまでにも複数のTOS-1Aを破壊したと報告している。その中には、今回と同じザポリージャ州での事例も含まれる。

(翻訳:ガリレオ)

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