バイデン大統領=ロイター

 パレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏が暗殺されたことを受け、米国防総省は2日、中東に艦艇や戦闘機を追加で派遣すると発表した。イランやイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」による報復に備え、イスラエルを支援する狙いがある。一方、バイデン米大統領は暗殺に関わったとみられるイスラエルのネタニヤフ首相に対し、不満を募らせている。

 同省によると、米国は、弾道ミサイルの迎撃能力を持つ巡洋艦や駆逐艦を追加配備するほか、戦闘機部隊を増やし、抑止力を強化する。また、空母「セオドア・ルーズベルト」に代わり、空母「エーブラハム・リンカーン」を派遣する。

 米ニュースサイト「アクシオス」によると、バイデン氏は1日にネタニヤフ氏と電話協議した際、イラン側の攻撃に対する防衛支援を伝える一方、イスラエルが今後再び緊張を高める行動を取った場合、米国の支援を期待しないよう警告。停戦合意に向けて早急に取り組むよう求めた。

 バイデン氏は5月に人質の解放などを含む包括的な停戦案を発表し、イスラエルとハマスの合意に向けてカタールやエジプトと仲介に取り組んできた。11月の大統領選への出馬を断念したバイデン氏は、来年1月までの任期中に停戦と人質の解放を実現し、「レガシー(遺産)」としたい意向も透ける。

 バイデン氏とネタニヤフ氏は暗殺事件前の7月下旬、ホワイトハウスで停戦について協議。だがアクシオスによると、バイデン氏は1日の協議でネタニヤフ氏に対し、協議内容と矛盾する形で「暗殺に踏み切った」と不満を示したという。

 ネタニヤフ氏を巡っては、自身の政治的な保身のために戦闘を続けているとの見方が根強い。バイデン氏は1日、記者団に「(ハニヤ氏の暗殺は)停戦交渉の役に立たない」と述べ、いらだちを隠さなかった。【ワシントン松井聡】

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