北朝鮮が風船で飛ばしたごみを処理する作業員=ソウルで2024年7月24日午後0時40分、日下部元美撮影

 韓国の大統領警護庁は24日、北朝鮮が飛ばしたごみ風船が大統領府の敷地内に落下したと明らかにした。韓国軍合同参謀本部によると、5月下旬以降、北朝鮮が風船を飛ばすのは10回目。大統領府にまで飛来したことで、対応を疑問視する声が上がっている。

 大統領府関係者は「飛んでいる風船をリアルタイムで監視し、落下場所も確実に把握していた」と強調した。調査の結果、積載物に有害な化学物質などは含まれていなかったという。

 北朝鮮は、韓国の脱北者団体が体制批判のビラなどを飛ばしたことへの対抗措置としてごみ風船を始めた。ビラの阻止などが目的とされるが、一部の専門家からは「危険物質が積載された場合を想定すべきだ」との声が上がっている。

 韓国外交筋は「化学兵器や生物兵器を入れて飛ばすことも想定し、ルートや距離を探っている可能性がある」と警戒感を強める。北朝鮮の元外交官で、亡命後に国会議員を務めた太永浩(テヨンホ)氏も「北朝鮮はデータをとっている」と指摘し、「人の少ない軍事境界線地域で撃ち落とすべきだ」と述べた。

 今回、北朝鮮が狙って大統領府に落としたかは不明。一方、これまでの落下物から風船を割るタイマーらしきものが見つかっており、韓国メディアは「時間と風向きをよく計算すれば大統領府の近くに落下させることができる」との軍関係者の話も伝えている。

 韓国軍はこれまで、風船を撃ち落とす対応は取っていない。かえって中身をまき散らしたり、地上にいる人らに被害が出たりする恐れがあるためだ。大統領警護庁も「軍のマニュアル通りにした」と説明している。

 韓国軍は6月上旬に軍事境界線付近で、約6年ぶりに宣伝放送を行うなどしたが、その後もごみ風船はやまない。大統領府関係者は24日、「問題の深刻さは認識しているが、追加措置や対応策についてはさらに検討する必要がある」と述べた。【ソウル日下部元美】

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