道路にズラリと並んだドイツのマルダー歩兵戦闘車(2023年11月22日、リトアニアのビリニュス)

<幹線道路の橋がミサイル攻撃で破壊された場合の代替ルートは?進軍中の部隊の休憩場所は?── ロシアとの戦争に備え、NATO諸国は大軍を速やかに東方へ送る具体的な準備を進めている>

ドイツ政府は、ロシアとの戦争が勃発した場合、幹線道路網を通って数十万の大軍が国内を移動できるよう計画を進めていると、独大手週刊誌デア・シュピーゲルが報じた。

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デア・シュピーゲル誌が入手した「機密文書」によると、近い将来、西側諸国とロシアの対立に火がついた場合、ドイツ軍とNATO軍を合わせた約80万人の兵士が、ドイツ国内の港や高速道路、鉄道を利用して東に進軍することになるとドイツ政府は考えている。

同誌によれば、このNATO即応部隊は、膨大な武器と装備、約20万台の車両とともに、3カ月〜6カ月以内に配備される必要がある。その多くは、北海に面したドイツの港を経由して東方の戦場に向かうことになる。

さらに西部の都市オーバーハウゼンから、ポーランドとの国境に近い東部ベルリン郊外までドイツ国内を横断する高速道路「アウトバーン2(A2)」(全長約486キロ)が、部隊の大移動できわめて重要な役目を担うことになると、デア・シュピーゲル誌は報じている。

A2の途中には橋や高架橋がいくつかあるが、これらはロシアのミサイルの主要ターゲットになる。攻撃されればNATO軍の動員に大幅な遅れが生じかねないため、ドイツ政府は代替ルートや仮設橋梁などを含む緊急対応策をすでに計画中だという。


数百メートル置きの補給所も


ドイツ国内を移動する数十万のNATO軍兵士を対象にした駐屯・補給・食料供給計画も、整備されつつある。同誌によれば、300メートルから500メートルごとに、部隊が補給や休憩をできるようにするようだ。

これほど大規模な兵站を用意するには、ドイツ連邦警察にも新たな権限が必要になる、と同誌は指摘する。徴兵や捕虜収容所の運営は警察が担うことになるかもしれないのだ。

本誌は、デア・シュピーゲル誌の報道内容について独自に検証できなかったが、ドイツ国防省にメールでコメントを求めている。

一方、英紙テレグラフは6月、将来的にロシアと戦争になった場合、米軍を含む軍隊とその装備を運ぶための「陸上回廊」をNATOが作ろうとしていると報じた。イタリアからスロベニア、クロアチアを経由してハンガリーに至るルート、トルコからブルガリアを経てルーマニアに至るルート、ギリシャからブルガリアを経てルーマニアに至るルート、スカンジナビア3国を通過するルートだ。

ドイツ当局もNATO首脳も、今後10年以内にロシアとの直接衝突が起こる可能性が高いと警告している。ウクライナ国内外で戦闘を繰り広げるロシア軍に対して、NATO首脳らは、ロシアとの直接衝突を回避する意向を繰り返し強調してきた。

ロシア政府のほうは、それほど慎重な物言いをしていない。2022年2月のウクライナ全面侵攻は、NATOへの先制攻撃であり、それに続く悲惨な戦争は、米国が主導する「西側集団」との戦いだと位置づけている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とロシアの同盟国は、ウクライナを支援する西側諸国への核兵器使用も繰り返しちらつかせている。
(翻訳:ガリレオ)

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