NATO首脳会議に出席し、写真撮影に応じる(前列左から)バイデン米大統領、NATOのストルテンベルグ事務総長、英国のスターマー首相ら=ワシントンで7月10日、ロイター

 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は10日、ワシントンで2日目の会合を開き、共同宣言を発表した。ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、年間400億ユーロ(約7兆円)の支援を来年も継続することなどで合意。また、中国がロシアに軍事転用可能な部品を輸出しているなどとして「(ロシアの)決定的な支援者」だと強い文言で非難した。

 宣言では、ウクライナの悲願であるNATOへの加盟について「不可逆的な道」と従来より踏み込んだ表現で言及。ただ具体的な道筋については、昨年の首脳会議と同様に「加盟国が同意し、条件が整えば、加盟に向けて申請する」と述べるにとどめた。

米ワシントンで開かれたNATO首脳会議=7月10日、ロイター

 また、ウクライナに安定的な支援を継続するため、ドイツに兵士への訓練や兵器供与の調整を担う新司令部を設置。ウクライナ政府との意思疎通を円滑化する目的で、NATOの文官である上級代表を首都キーウ(キエフ)に初めて常駐させる。核戦力の近代化を進めることにも言及し、核兵器使用を示唆するロシアをけん制した。

 一方、中国に関しては、過去の首脳会議と比べても強い文言で批判。中国はロシアのウクライナ侵攻を巡り「無制限のパートナーシップと、ロシアの防衛産業への大規模な支援」を実施し、「決定的な支援者になった」と指摘。「中国の野心と高圧的な政策は、我々の利益、安全保障、価値観に挑戦し続けている」と強調した。また、北朝鮮やイランもロシアを軍事的に支援しているとして、懸念を示した。

記者会見する北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長=ワシントンで7月10日、ロイター

 ロシアについては、依然として加盟国の安全保障に対する「最も重大で直接的な脅威」であり、その脅威は「長期的に続く」と指摘。ただ、対立の激化を防ぐため、ロシア側と意思疎通のチャンネルを維持する意思があるとした。

 日本を含むインド太平洋地域については、ウクライナ支援やサイバーセキュリティー、偽情報対策などの分野で協力を強化していく方針を示した。

 ストルテンベルグ事務総長は10日の記者会見で「我々のウクライナ支援が信頼でき、持続的なものであればあるほど、戦争を早く終わらせることができる」と主張。ウクライナのNATO加盟については「時期が来れば、加盟できる」と説明した。中国に対しては「我々が発信したメッセージは、非常に強く明確だ」として、ロシアへの支援をやめるよう要求した。【ワシントン松井聡】

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