14年ぶりの政権交代でイギリスの新首相に就任したスターマー英労働党党首(7月8日)
<保守党のたび重なる不祥事を追い風に総選挙に大勝した中道路線の担い手>
キア・スターマーが英労働党の党首に就任したのは2020年4月。労働党は前年12月、当時のジェレミー・コービン党首の下で戦った総選挙で大敗していた。
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スターマーは労働者階級の家庭出身の元弁護士。08~13年にイングランドとウェールズの検察トップを務め、これによりナイトの称号を得た。議員に初当選したのは2015年5月の総選挙だ。
労働党の党首になってからは、路線をコービン時代の左派から中道へと転換。またコービン時代の労働党内に反ユダヤ主義があったことを指摘する報告書を受けて、コービンの党員資格を停止した。
今回の総選挙での労働党の大勝とスターマー首相誕生の背景には、与党・保守党がここ数年の間に積み上げてきたスキャンダルと危機があった。中でも「パーティーゲート」――新型コロナウイルスのパンデミックにより、イギリスが厳格なロックダウンを行っていた最中に、当時のボリス・ジョンソン首相や著名な政治家たちがパーティーや会合を開いていた問題は、国民の政治不信を招いた。
在任期間45日という最短記録で辞任したリズ・トラス首相は、大型減税を打ち出すなどして経済に混乱を招き、政治にもさらなる不信を招いた。
労働党の経済政策の柱は、イギリスの安定と成長の回復だ。この政策に関しては、経済界からの信頼は勝ち得ているものの、税制に関する方針がしないとの批判もある。また、機能不全に陥っている国民保健サービス(NHS)の改革も目指す。
「難民の強制移送」制度は見直しへ
総選挙のマニフェストにおいて労働党は、リシ・スナク前政権下で導入された、不法移民をルワンダに強制移送するシステムを撤廃するとしている。このシステムは多くの批判を浴びた上、最高裁判所が違法判断を示したため、一度も実施されていない。
過去数年の間に、小船に乗って英仏海峡を渡りイギリスにやってきた不法移民は数万人に及ぶ。移民全体の急増も相まって、イギリスでは国境警備が政治課題となっている。
昨年10月7日のハマスによるイスラエルへの越境攻撃の後、イスラエルがガザへの水と電気の供給を遮断したことについてスターマーは「イスラエルにはそうする権利があると思う」と発言して党内からも批判を浴びた(スターマーは『いかなる行為も国際法の枠内で行われるべきだ』とも述べた)。2国家共存に向けた和平プロセスの一環として、パレスチナ国家を承認するというのが労働党の方針だ。
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