ポーランドのノバ・デンバで米軍兵士からエイブラムス主力戦車の訓練を受けるポーランド兵(2023年4月12日) Photo by Artur Widak/NurPhoto
<アメリカ製エイブラムス主力戦車が大量にポーランドのNATO基地に送られた。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する牽制だ、と軍事専門家はみる>
一個旅団を編成できるほど大量のM1エイブラムス戦車がアメリカから送られ、ポーランドにあるNATOが建設した施設に到着した。「ロシアに対してメッセージを送ることになる」と、ある軍事専門家は言う。
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米軍の機関紙スターズ・アンド・ストライプスは米陸軍からの報告を引用し、主力戦車M1エイブラムス14両とM88装甲回収車1両が、ポーランドとウクライナの国境から西に約400キロのポヴィッツにある陸軍事前集積備蓄(APS)基地に到着したと報じた。NATOが資金を提供した施設だ。
この記事は、この戦車が、すでにエイブラムス戦車31両が配備されているとみられるウクライナに送られるかどうかは明らかにしていない。だが、ウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻のせいでNATOとロシアの緊張が高まるなか、ポーランドのAPS基地は、東ヨーロッパにおけるNATOの防衛力の強化をめざしている。
元米陸軍大佐で欧州政策分析センター(CEPA)の上級研究員レイ・ヴォイチクは、この施設には、最終的に米陸軍の装甲旅団一個分の装備一式が揃うだろうと言う。
「つまり、緊急の指示であっても短時間で、米軍の装甲旅団の兵士全員を空路でポーランドに派遣し、数日以内に戦闘態勢を整えることができるということだ。装備が船で到着するのを30日も待つ必要がない」
ポヴィッツの基地は、ベルリンの東にある唯一の米軍APS拠点であり、これは「ロシアへのメッセージ」になるだろう、とヴォイチクは付け加えた。
強力だが高価で扱いが難しい
6月29日にAPSに到着したエイブラムスは、1両約1000万ドルで、アメリカのウクライナへの軍事支援パッケージの中でも高価なアイテムのひとつ。ウクライナはかねてよりこの戦車の供与を求めていたが、その大きさと補給や部品調達の複雑さから、2023年の到着を前には多くの議論があった。
エイブラムスに乗る予定のウクライナ軍兵士らは5月、CNNの取材に対し、火力と機動性には優れているが装甲が弱いことを懸念していると語った。一方、4月に米軍当局者がAP通信に語ったところでは、エイブラムスはロシアの無人偵察機に対する防備が弱いという理由で、戦場から撤退させられているという。
3月にソーシャルメディアで共有された映像は、ドローンによる空爆の後、前線で炎上するM1エイブラムスを映しているように見えた。当時、ロシアの国営メディアは、ロシア軍がアウディーイウカを占領した直後、ロシア軍がその近郊でエイブラムス戦車3両を攻撃したと報じた。
ポヴィッツのAPS基地は、ヨーロッパにおいてアメリカの第405陸軍野戦支援旅団の任務指揮下で活動中の6つのAPS-2作業拠点のひとつとなる予定。同基地には最終的に数百両のM1A2エイブラムス戦車、M2 ブラッドレー歩兵戦闘車、M109パラディン自走榴弾砲が配備されることになるという。
「米軍がNATOの東側方面の抑止と防衛に貢献するための新たな措置だ」と、米軍の元欧州軍司令官ベン・ホッジスはX(旧ツイッター)に投稿した。「エイブラムス戦車85両を含む機甲旅団全体の装備が、ポーランドのNATO倉庫に配備された」
一方、報道によれば、アメリカはウクライナに対する約1億5000万ドル相当の軍事支援パッケージを発表する準備を進めており、これには新型の高機動砲ロケットシステム、対装甲兵器、小火器、手榴弾などが含まれるという。
AP通信は、無名の情報筋の話として、この支援物資には155ミリと105ミリの砲弾も含まれると報じている。一方、ロイター通信によれば、7月1日に発表される予定のパッケージには、地対空ミサイルHAWKも含まれるという。
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